クリッピングについて考える(4)クリッピングする?しない?― Part 1

パム・クラーク著


(定義)
この文章における「飛べる鳥」とは、クリッピングされておらず、自分の意思で屋内を飛んで移動することができる飼い鳥のことを指します。クリッピングされていなくても、何らかの理由で自発的に飛ばない飼い鳥は含みません。また、フリーフライトと呼ばれる、屋外で自由に飛ばしている飼い鳥も該当しません。


これまで3回に渡って、クリッピングする前に考えて欲しいこと――飛べることの大切さ――について様々な観点から紹介してきました。飛ぶことは鳥の健康を心身共に支えるだけでなく、飼い主にも多くの利点があります。

親鳥に育てられ、羽が生え揃い、翼を切られることなく、巣立ちの準備ができてから人にお迎えされる。これが飼い鳥の理想です。ですが、残念ながら現実は理想とは異なります。

本来の姿とは異なる暮らしを強いられた鳥と、色々な事情を抱える人間との複雑な生活。これがクリッピングという選択を許容してきました。成鳥の場合、もはや飛ぶことを選択できない飼い鳥もいます。今回は、「飛べるようにするのは、私と鳥にとってよい選択なのか」という判断について考えたいと思います。

自問自答する

クリッピングするしない、いずれの選択をする場合も、その結果、何が起こり得るかよく考えます。環境、家族構成、そして鳥の性格など、思いつく限りのことを自問自答します。十分に分析すれば、自信をもって選択できるはずです。クリッピングをすると決めた場合、それ自体は残念なことではあるけれど、考え抜いた結論であれば、正しい選択だと納得できるでしょう。一方、しないと決めた場合は、その決断にコミットして、飛べる鳥と暮らすための準備をしなければいけません。

居住環境

【環境の評価】
ご家庭によっては、鳥が安全に飛べる環境を作れない場合もあります。飛べる鳥と安全に暮らすための具体的なヒントは次回以降紹介する予定ですが、何を注意すればよいか簡単に見てみましょう。

  • 鳥を逃がさない対策

飼い鳥が理由なく外に逃げ出すことはまずありません。よくあるのは、何かに驚いて飛び出てしまうケースです。鳥が自らの意思で、住み慣れた家を出て見知らぬ世界に飛び出すようなことはしません。出掛ける人や帰ってきた人を追って、そのまま外に出てしまうこともよくあることです。特に、普段から肩に乗る子であれば、家を出ようとする人、または帰ってきた人の肩に乗ろうとして飛んできます。その時にドアが開けば、それに驚いて、そのまま飛んで出てしまいます。ドアを二重にすることで、この事故は防止できます。

  • 家族や来客

放鳥中ドアを閉めることの大切さ、そしてシーリングファンなどの危険性を家族全員が認識できていますか? 幼いお子さんがいるとドアが開けっ放しになることも多く、迷子にするリスクが上がるかもしれません。みなさんの友達は鳥がいることに注意してくれても、お子さんの友達はどうでしょう。子供が少し大きくなるまで、待った方がいいかもしれません。飛べるようにしても、子供が小さい間は危ないからと、鳥をケージにいれっぱなしにするのであれば、本末転倒です。

大人の来客にも注意は必要です。実際にあった話を紹介します。そのお家ではヨウムを飼っていて、普段から二部屋を自由に飛び回らせていました。ある日、遊びに来た友人が、気を遣って部屋を仕切るガラスのスライドドアを閉めました。ドアが閉まっていることに気づかなかったヨウムが、いつものように飛び回ろうとして、ドアに激突してしまったのです。来客中は、どんな危険が起こるか常に予測して注意が必要です。

  • 屋外ケージ

屋外専用のケージはありますか?もしくは安全に外で過ごせる場所をつくる余裕はありますか? 太陽を直接浴びる大切さもありますが、飛べる鳥には、家の周りの景色や音を見て、知って、慣れておいてもらうことをお勧めします。万が一、逃がしてしまったときも、家の近くの景色を知っていれば、驚いて遠くに飛んでいくこともなく、すぐに見つかるかもしれません。

  • 他のペットの存在

猫は中型~大型の鳥が飛んでいてもあまり気にならないようですが、小型の鳥が飛ぶと、注意を惹かれて飛びつくことがあります。捕食欲が強い犬種は、止まっているときは気に留めないのに、飛んでいる鳥を見ると、捕まえたくなるようです。犬に「まて」を教えることはできますが(猫でもできる子がいるようです)、それにはトレーニングが必要です。

鳥同士でも互いに攻撃的になることがあります。これもトレーニングでコントロールできますが、トレーニングが終わるまでは、一部クリッピングをしたほうが安全なこともあります。この場合、完全にクリッピングする必要はなく、一部で大丈夫です。初列風切り羽の最初の2~3枚を3~4センチカットするだけでも、飛びづらくなり、攻撃性を抑える効果があります。

続きはプレミアム記事でお楽しみください。

Pamela Clark,  2019.4.24執筆
翻訳:小林由香

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コメント

  • コメント ( 1 )

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  1. こんにちは。
    プレミアム会員でないため、続きの方に記載されているのかもしれませんが、気になったことをひとつ。

    >しないと決めた場合は、その決断にコミットして、飛べる鳥と暮らすための準備をしなければいけません。

    これに対し、クリッピングを決めたなら、飛べない鳥と暮らすための準備も必要です。
    飛べる鳥が特殊なのではなく、飛べない鳥が特殊なのです。

    また、

    >鳥を逃がさない対策

    クリッピングしても鳥は飛びます。
    ここに大きな間違いがあります。
    飛ばない対策のクリッピングは、初列、次列をほとんどバッサリと切る必要があります。
    逃さないための対策にクリッピングは影響しないと思っていた方が安全です。

    両方の視点から展開していただけるとわかりやすいと思います。

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