クリッピングについて考える(3)「飛ぶこと」 飼い主へのメリット ― Part 1

パム・クラーク著


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(定義)
この文章における「飛べる鳥」とは、クリッピングされておらず、自分の意思で屋内を飛んで移動することができる飼い鳥のことを指します。クリッピングされていなくても、何らかの理由で自発的に飛ばない飼い鳥は含みません。また、フリーフライトと呼ばれる、屋外で自由に飛ばしている飼い鳥も該当しません。


自由に飛び回る鳥との暮らしは楽ではありません。散らかるし、気を遣うし、カオスになることもあるし、飼い主にとって面倒なことが増えます。それでも私は二度とクリッピングしないし、私の考えに賛同してクリッピングを止めた方々の多くは、もうクリッピングしないと言います。どんなに散らかって面倒なことが増えても、それを凌駕するほどの特別で素晴らしい体験ができるからです。今回は、クリッピングしないことで、飼い主が得られるメリットについてお話します。

私はなぜクリッピングを止めたのか

最初はモラル的なことでした。鳥から飛ぶことを奪うべきではないと思ったからです。それが結果的に、次のようなメリットをもたらしました。

  • 鳥のボディーランゲージに気づきやすくなり、理解できるようになった
  • 鳥だけでなく、周囲により注意が払えるようになった
  • 鳥の行動について知識が増え、トレーニングや動機付けのスキルが上がった
  • 鳥の安全を守る意識が高まった
  • 鳥の問題行動が明らかに減った
  • 病気の兆候に気づきやすくなった
  • 鳥同士の不仲に早く気付けるようになった
  • 鳥との信頼度、関係性が深まった
  • 鳥との生活がより楽しくなった!

ボディーランゲージが理解できるようになる

私たちが何かを学んでスキルを得たいと思うのは、その必要があるときです。クリッピングされた鳥は動きが制限されるので、飼い主は繊細なボディーランゲージを読み解く必要がありません。噛まれないために、噛む前の仕草や状況を理解しようとするくらいだと思います。

クリッピングせずに多羽飼いをしている場合、あらゆる問題に直面します。喧嘩や事故の発生率も上がるし、飼い主との信頼関係も試されます。つまり、鳥たちのボディーランゲージをより繊細に読み取る必要が出てきます。

よく飛ぶ子達は、人の動きに敏感に反応するので、飼い主も自分の動きを見直すようになります。急な動きや、恐怖感を与える動きをすれば、飛んで逃げるからです。クリッピングされていると、そこまで機敏に動けません。飛べる鳥との暮らしは、繊細で思慮深い飼い主を育てることにもなります。

周囲により目が行くようになる

飛べる鳥との暮らしには危険が付きものです。危険を回避するには、鳥だけでなく周囲にも常に気を配ることが求められます。鳥や周囲に目を配ることで、リスクマネージメントスキルが身に付くだけでなく、鳥との協調性も生まれます。友人から言われて、心に響いた言葉があります。「相手がこちらを気にしてくれるなら、我々も同じように気にしてあげないとね」

鳥たちは私の動きを見て、それに反応しています。だから、私も同じように鳥たちの動きを見て反応できるようにしたいと思いました。そして、それを心掛けることで、より深く鳥とのつながりを感じられるようになりました。

知識やレベルが向上する

昔のことですが、ハシゴを使ってステップアップ(登ること)を教えて、上手くできなければ追い立てて、登るように促したことがありました。指に乗ったときに趾を押さえて、じっとさせる練習をしたこともありました。誰かから「したほうがいい」とアドバイスを受けて、そのとおりにしていました。

今はすべてやめました。当時はクリッピングもしていたので、鳥たちは、無知なわたしの指示に従順に従っていました。でもこのような、力と命令に従わせるような接し方は、きっと嫌だったと思います。

自由に飛べる鳥と暮らし始めると、無理やり従わせることはできなくなります。嫌なら飛んで逃げます。飼い主に知識やスキルがない状態で鳥が問題行動を始めたら、ひとたまりもありません。鳥の行動に対して飼い主ができることや正の強化について学んで、行動をコントロールすることが必要になります。

クリッピングを止めた友人の言葉です。「飛ぶことができれば、周囲の環境に合わせて行動ができて、行きたいところにいける。わたしと一緒にいたいとき、いたくないときの選択もできる。そして、この子が飛び回ることで、飼い主としてのわたしのレベルも上がった。とても賢く、「飛ぶ」という能力をもって生まれた鳥たちからそれを奪うなんて、もうありえない」

責任を自覚する

屋内で鳥が自由に飛べるようにするには、その危険に常に備える必要があります。コンロの上に着地したり、外に飛び出したり、トイレにはまってしまうこともあります。有毒な観葉植物を口にすることや、シーリングファンに突っ込むことも。実際に事例があるものや、想定しておくべき危険もあります。

ただ、この危険は環境の整備や、トレーニングで対処できます。もちろん、常に鳥から目を離さず、責任をもって放鳥することが大前提です。クリッピングさえしておけば危険を回避できると考えるのではなく、常日頃から、想定される危険とその回避策を考えることが大切です。鳥たちの安全を守るのは飼い主の責任です。

「鳥を環境に合わせるのではなく、鳥が飛び回っても安全な環境を維持するのが、飼い主の責任」 読者の声です。

問題行動が軽減される

問題行動の多くは環境にあります。選択肢がない、学ぶ機会がない、フォージングや自由な時間がない。自由に飛び回れない鳥ほど、問題行動を起こしやすくなります。もちろん、飛ぶことができれば、問題行動を起こさないというわけでもありません。自由に飛べても、大声で鳴いたり、攻撃的になったり、毛引きもします。ただ、クリッピングをしている場合と比べると頻度はぐっと下がります。

うちの子達は、わたしを必要とするときは飛んで来ればいいので、呼び鳴きする必要がありません。私が間違ったことをすれば飛んで逃げるので、噛む必要もありません。毛引きをしている子もいません。飛んだあとは羽繕いで忙しく、暇つぶしのために羽を抜くこともありません。

続きはプレミアム記事でお楽しみください。

(Pamela Clark, 2019.4.10)

Pamela Clark, 2019.4.10執筆
翻訳:小林由香

Pam Clark氏より当該記事の翻訳及び掲載許可を得て掲載しております。
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(参考文献)
McKendry, Jim. Publication date unknown. Wing Clipping vs. Flighted Companion Parrots. World Parrot Trust: Ask an Expert. https://www.parrots.org/ask-an-expert/wing-clipping-vs-flighted-companion-parrots. Accessed 03/29/2019. Accessed 03/30/2019
Sarah and Three Birds and A Cloud. 2012. https://threebirdsandacloud.wordpress.com/2012/08/28/life-with-flighted-parrots. Accessed 04/08/2019. 

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