鳥の繁殖のコントロール

Rafael Zamora Padrón, Scientific Director, Loro Parque
ラファエル・ザモラ・パドロン
ロロパーク財団 サイエンティフィック・ダイレクター

繁殖期が始まると、飼育員の仕事が増えます。食料供給量は増加し、設備点検の強化など起きるすべての事に気を配らなければなりません。この時期は様々な状況が変動するので、観察力を高めることが肝要です。雛が生まれてからは、さらにその重要性は高まり、親鳥が同じように世話をしてくれているかの如く、その成長ぶりを観察していかなければなりません。

熟練した繁殖家や繁殖センターが、我々に繁殖をコントロールすることが可能かどうかを尋ねてきます。その答えは広範囲にわたり、とても大掛かりで挙げればきりがないほど多岐にわたるチェックリストになってしまいます。しかしこの日常的に行うべき簡単なタスクリストを作成して確認する方法が鳥の世話には適しています。特に、3ペア以上の鳥を扱うセンターには最適です。

もう一つ考慮する重要な点は、それぞれの成長期に起こりうる好ましくない事態を防ぐために遅れなく対処することです。春や鳥の繁殖期は、鳥の体内外に寄生虫が発生しやすい時期ですから発生を回避するために必要な設備を整えます。

この時期は、げっ歯類、虫、そしてセンターの位置する地域によっては猛禽類や蛇などの侵入の可能性に注意しなければなりません。フクロウやチョウゲンボウ等のその地域に生息する捕食者が攻撃を始める可能性が高い時期は、雛が生まれ、その雛がまだ未熟な状態で気楽に餌を探している頃であることを覚えておいてください。猛禽類の種類に応じて、鳥舎を補強し防御する必要があります。捕食者が鳥舎の上に乗らないように、金属製のメッシュやワイヤーを2重にしておけば、通常は十分でしょう。

同様に、ネズミの侵入も継続的に防がなければなりません。通常は鳥を襲うことはありませんが、夜になると鳥を怖がらせて健全な生活に支障をきたすこともあります。またエサ入れや水入れに近づき、鳥のフードを汚染してしまいます。柵を設けることでネズミの侵入を防ぐと同時に害虫を防ぎ、適切な防除対策になります。

定期的な点検は例外なく行われるべきであり、その内容は以下の通りです。

– エサ入れと水入れを点検。一日三回。

– 各鳥舎、囲い内の鳥を一羽ずつ確認する。朝と正午の一日二回。もし繁殖期であれば日没の時間帯は近づかない。

– 鳥舎へのドア、その他の出入りを管理する。

– 抱卵期か育雛中であれば、鳥が恐れないよう十分に離れた場所から巣の状態を観察する。 

– 止まり木や鳥小屋の床などを確認し、毛引きした羽根が落ちていないか、排泄物の状態、餌の減り具合などを確認する。

この時期、鳥の挙動が著しく急変することがあります。最初の雛が巣立つ頃、繁殖期の雄、特に若い雄が自分の雛鳥であるにも関わらず非常に攻撃的になることがあります。これは自分の雛を認識していないからで、特に抱卵期のメスに餌を運ばなかった雄によく見られます。このような事態は特に注意し、発見したら同じ空間に早急に柵を設け、親鳥が雛鳥に危害を加えることなく育雛できるようしてあげましょう。

また、雛がまだ自立していない時期でも雌が新しい産卵を始める兆候を示し、雄がすでに居る雛たちを強制的に追い出すこともあります。この場合、このペアに二つの巣を準備し、二つ目の巣を次の産卵にあてるようにしてあげましょう。

繁殖期の鳥に対して並行して行うもう一つの仕事は、親から十分な食事を与えられていない雛たちを助けてあげることです。そのためには、衛生的で信頼性のある保育器と孵卵器を用意しましょう。卵や生まれたばかりの雛を人工的に世話するなどの補助的な技術が必要と思われるペアには、抱卵期の初めから電源を入れおくよう推奨しています。

最近ロロパーク財団で生まれ、足輪を付けられた雛の中で、私たちの目を奪うのはスミインコ (Chalcopsitta atra atra)です。 32日目にして、まだ将来の漆黒の姿には程遠いながらも、魅力的な姿に成長しました。

生後32日のスミインコ ©Perez

繁殖期間中は、繁殖家それぞれの思いが詰まった時期であると同時に、不測の事態が多く発生する時期であり、時には苦い思いをするかもしれないという事を、私たちは念頭に置いています。無事乗り切るには、起こりうる事態を予測し、蓄積された経験に基づいて起用可能な方法を順に行っていくことです。

©2021 Rafael Zamora Padrón, M.Pérez – Loro Parque Fundación
翻訳:WING YOU事務局

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