クリッピングについて考える(2)「飛ぶこと」 鳥へのメリット ― Part 1

パム・クラーク著


クリッピングについて考える(1) Part 1はこちら
クリッピングについて考える(1) Part 2はこちら(プレミアム会員限定公開)


2回目となる今回は、「飛ぶ」という行為が飼い鳥に与えるメリットについてお話しします。現在、クリッピングしている方も、フラットな目線でこれを読んでみてください。自分の知識や判断は妥当だろうか? 自分の知性に謙虚でありつづける「知的謙虚さ」を持つことで、より中身のある議論ができるようになると思います。

定義

この文章における「飛べる鳥」とは、クリッピングされておらず、自分の意思で屋内を飛んで移動することができる飼い鳥のことを指します。クリッピングされていなくても、何らかの理由で自発的に飛ばない飼い鳥は含みません。また、フリーフライトと呼ばれる、屋外で自由に飛ばしている飼い鳥も該当しません。わたしはフリーフライトのトレーニングを行うこともありますが、これができるのはごく稀なケースであり、推奨はしていません。

飛べるようになる過程と脳の発達

羽が生え揃う過程で、鳥は飛ぶことを学びます。飛びたいという気持ちは本能なので、それができる環境であれば、成長過程で必ず飛び立とうとします。ただし飛ぶスキルの獲得には練習が必要です。

自分でヨウムの繁殖を始めてみて分かったのは、雛のときと羽が生えそろったあとではまったく別の鳥になるということです。これはどの鳥種でも同じです。飛ぶことを学ぶ過程で鳥は大きく成長します。

「羽が生え揃うことは、これから先の生活に大きな影響を与える。最初の成長を成し遂げ、鳥として活動できる状態になり、飼い主を含む周りの環境との関係性がスタートする。羽が生え揃い、成長に合わせた環境で育てられた子達は、個性が育まれ、好みや主張を持つようになる」 (Linden, P. 2006)

また、飛ぶ訓練から得られるメリットは、身体的経験から生まれる体の動きやそれに伴う自信、自律性の成長だけに留まりません。

感覚器の発達

Parrot university 訳註1) のスティーブ・ハートマン氏の著書からいくつか紹介します。

「子供の学習能力が一番上がるのは、視覚、聴覚、味覚、触覚、臭覚の感覚器が同時に刺激を受けるときだ。鳥も同じく、複数の感覚が同時に刺激されるときが、一番の学ぶタイミングになる。飛んだ時に見えるもの、聞こえてくる音、肌で感じる世界は地上にいるときとまったく違う。特定のスキルを習得、または同時に複数の感覚を体験すると、それぞれの感覚への神経経路が強化され、得たスキルや知識をさらに伸ばすことができる。」(Hartman, S. 2007)

「肉体や精神と同じく、感覚も一定の時間を掛けながら発達していく。その過程で、互いの発達を担う脳の領域間で情報交換を行い、それぞれが最適な状態で発達することができる。たとえば、赤ちゃんの視覚は、ハイハイして動けるようになり、違った角度や距離から物を見られるようになると大きく発達する。また視覚が発達して距離や視点の情報を脳に提供できるようになると、体の動きや力の入れ方が分かるようになる。視覚と体の動きが互いに発達することで、立体的にものが見えるようになる。」(Hartman, S. 2007)

「早く飛べるようになれば、動体視力のスピードが上がり、脳の処理能力も上がる。その結果、さらに早く飛べるようになる。脳の情報処理速度が速くなり高次元になれば、決断力が上がってミスが減り、精神・身体・社会的順応性のあらゆる面で効果が見られるようになる。」(Hartman, S. 2007)

鳥類に対して、ハートマンの見解を裏付けする研究は記されていませんし、これに対する対照実験結果もありません。ですが、人間については研究があります。”The Role of Locomotion in Psychological Development (心理的発達における運動量の役割)”という論文には、「幼児がひとりで体を動かすことができる1歳後半頃に、心理面にも大きな発達がみられる。これは体の動きと心理的成長が密接に関係していることを示す例である。ここでは、運動機能獲得後の、知覚と行動の繋がり、空間認知、記憶、社会性と感情面が大きく成長していく過程を記録する」(Anderson, D et al. 013)と書かれています。

人間以外の動物に関しても研究を続けていけば、同じような結果にたどり着くかもしれません。生物が本来有している運動機能をタイムリーに獲得することで、脳や内面の成長を促すことができるはずです。

続きはプレミアム記事でお楽しみください。

訳註1)  米国ノースカロライナ州にあるコンパニオンバード専門用品店。コンパニオンバードに関する書籍や雑誌の販売や、トピックを設定した教室なども開催している。

Pamela Clark, 2019.3.27執筆
翻訳:小林由香

Pam Clark氏より当該記事の翻訳及び掲載許可を得て掲載しております。
当サイト内の全てのテキスト、画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

(参考文献)

Anderson, D. I., Campos, J. J., Witherington, D. C., Dahl, A., Rivera, M., He, M., Uchiyama, I., … Barbu-Roth, M. (2013). The role of locomotion in psychological development. Frontiers in psychology, 4, 440. doi:10.3389/fpsyg.2013.00440 Accessed 03/19/2019.

Bergman, Charles. 2013. No Fly Zone: Denied their natural habits, millions of pet parrots lead bleak, lonely lives. The Humane Society of the United States. https://www.humanesociety.org/news/no-fly-zone. Accessed 03/26/2019.

Glendell, G. 2017. Birds Need to Fly. The IAABC Journal. http://spring2017.iaabcjournal.org/birds-need-fly. Accessed 03/24/2019.

Hartman, Steve. 2007. Thinking on the Wing.The Parrot University. https://theparrotuniversity.com/flight. Accessed 03/26/2019.

Linden, Phoebe Greene with Leuscher, Andrew. 2006. The Manual of Parrot Behavior. Ames, Iowa: Blackwell Publishing. Pages 93-111.

Moser, Dean. 2004. Parrot and Flight: Flight and the Companion Parrot.AFA Watchbird: Journal of the American Federation of Aviculture. https://journals.tdl.org/watchbird/index.php/watchbird/article/view/1841/1815. Accessed 03/27/2019.

Orosz, Susan PhD, DVM, Dipl ABVP (Avian). 2014. Is Your Bird Ready to Fly? Avian Expert Articles. https://lafeber.com/pet-birds/bird-ready-fly. Accessed 03/22/2019.

Orosz, Susan PhD, DVM, Dipl ABVP (Avian). 2016. Free Flight: Lessons from ExoticsCon. Avian Expert Articles. https://lafeber.com/pet-birds/free-flight-lessons-exoticscon. Accessed 03/22/2019.

Proctor, Noble and Lynch, Patrick. 1993. Manual of Ornithology: Avian Structure & Function. Ann Arbor, MI:Yale University. Pg. 214.

関連記事一覧

コメント

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。