日光浴について考える ― Part1

パム・クラーク著


飼い鳥には太陽光や紫外線ライトを使った日光浴が欠かせません。屋内でフルスペクトル訳注1)ライトを使うことも勧められていますが、本当にそれだけで必要なものがすべてカバーされるでしょうか。今回は、鳥が紫外線を浴びる必要性と方法についてお話します。鳥の健康のためだけでなく、費用とメリットを考えた中でベストな方法を見つけるヒントになれば幸いです。

自然光はなぜ必要?

光の質を話すときに「自然光」という単語がよく使われます。自然光は紫外線を含む様々な光の波長(スペクトル)で構成された光のことで、電灯など人工的な光は自然光ではありません。鳥が自然光からの紫外線を必要とする理由は3つあります(Becker 2014)。

1)ビタミンDの生成と吸収の促進
2)紫外線不足による病気の防止
3)生活の質(QOL)の向上

紫外線とビタミンD、鳥との関係

栄養を吸収し代謝を促進するためには、人にも鳥にもビタミンDが必要です。またビタミンDはカルシウムの吸収にも欠かせません。鳥がビタミンD欠乏症になると、徐々に体内のカルシウムも不足することになり、卵詰まりや殻の軟化、骨折や発作の原因になります。

カルシウムには心臓や筋肉、神経の機能を正常に保つ役割もあります(Ritchie, Branson and Harrison, Greg 1997)。ヨウムは低カルシウム血症になりやすく、これもビタミンDの欠乏が原因であると考えられています。ビタミンD欠乏症は「スターゲージング」訳注2)で知られる病気や、ウロコインコ出血症候群、ガンの原因にもなると考えられています(Becker 2014)。

ビタミンDを摂取するには

ビタミンD前駆体は食物から摂取することができ、それを多く含む食物もあります。ただ、食物からだけでは鳥が必要とするビタミンDを効率的に取ることはできません。

実のところ、鳥が食物からビタミンDをどれくらい摂取できているのかはよく分かっていません。鳥は自然光をたっぷり浴びて生活し、自然光からビタミンDを生成するという素晴らしい能力を進化させてきた生き物です。そのため、食物からビタミンDを摂取する機能が退化した可能性があります。解明されていないことはまだ多くあり、鳥種によって必要な量も明確には分かっていません。

鳥の尾脂腺からはワックスのような脂が分泌されます(ボウシインコやコンゴウインコの仲間の一部には尾脂腺がなく、皮膚からビタミンDを摂取していると考えられています)。

この脂に紫外線が当たるとビタミンDが生成されます。つまり、紫外線を浴びながら、尾脂腺からの脂を使って羽繕いをすることで、生成されたビタミンDを口から摂取することになるのです。羽繕いで口にしたビタミンDは肝臓でさらに安定したビタミンD3に変換されます。

さらに鳥は目からもビタミンDを取り入れます(Becker 2014)。人の目は紫外線の光をフィルターしますが、鳥の目は、赤・緑・青に加えて、紫外線の光も吸収します。また、網膜の周辺にハーダー腺とよばれる分泌腺があり、そこから紫外線が網膜に取り入れられます。

さらにハーダー腺が紫外線を受けると、脳にある松果体と下垂体が刺激され、呼吸や換羽、夜と昼のサイクル、そして渡り鳥であれば渡りのタイミングをコントロールします(Becker 2014)。鳥の体の代謝と健康はこの松果体と下垂体でコントロールされているので、定期的に紫外線を十分に浴びることが欠かせません。このことからも、食事以外の方法でもビタミンDの摂取が必要なことが分ります。

QOL

フルスペクトルの光が鳥の健康に与えるメリットを記載する資料は多くあるのですが、QOLに関する情報はほとんどありません。鳥のQOLについて研究論文を書くのが難しいこともあります。そのため個々の事例に基づいてお話します。カレン・ベッカー獣医師は、紫外線に当たることで次のことが改善されると報告しています。

羽毛損傷行動
羽の健康
臓器障害
免疫不全
不機嫌や怒りっぽさ

最後のポイントは的を射ていると思います。私は5羽と暮らしていますが、彼らが怒りっぽくイライラしたり、暇そうにしたりしていれば、朝と夕方に外で日光浴をさせます。戻ってきたときにはリラックスしてご機嫌です。私たちも外に出れば気分転換できますが、それと同じですね。

したいからではなく必要だから

日光浴の必要性については議論の余地はありません。太陽光もUVライトも浴びていない鳥が病気に罹るリスクは高く、QOLも低下します。食事と屋内の光だけでは不十分です。「UVライトを使えば、飼育下でも必要な光を浴びられるという利点があります」(Wade 2009)

では、UVライトと太陽光の違いについて考えます。鳥に必要な光とは?

フルスペクトルの光

紫外線には、UVA、UVB、UVCという3種類の光が含まれています。鳥類や爬虫類は、人間には見えないUVAの光が見えます(Wade, Laura 2009)。UVAが見えることで、鳥はペアの相手や熟した果実を識別しています。一方、UVBは鳥がビタミンDを作り出すことを助けます。UVCはオゾン層でカットされるため地上にはほとんど届きません。窓や目の細かい網戸はUVBをカットしてしまうため、窓越しの日光浴では鳥の健康は保てません(窓越しでも床などが色あせしてしまうのは、窓でカットされないUVAのしわざです)。

フルスペクトルの光について理解しておいて欲しいことが6つあります。これを本当に理解できている人は、実のところあまりいません。出版物やUVライトメーカーが言うことでさえも、間違いや漏れている情報があります。なぜなら、情報の殆どは爬虫類用から推測したものだからです。爬虫類と鳥類では、必要な光が異なります(Thrush, 1999)。

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Pamela Clark, 2018.6.5筆
翻訳:小林由香

Pam Clark氏より当該記事の翻訳及び掲載許可を得て掲載しております。
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訳注1) 太陽光は波長が異なる複数の光で構成されており、すべての光を含んだ状態をフルスペクトルと呼ぶ。窓ガラスなどを通すことで一部の波長の光はカットされる。

訳注2)呼吸が苦しいときに、息を吸いやすくするため気道を伸ばして顎を上げる仕草。空を見上げるような姿勢になるためスターゲーイジング(星を見つめる)と呼ばれる。

(参考文献)
Ritchie DVM, Branson and Greg and Linda Harrison. Avian Medicine: Principles and Application. Lake Worth: Wingers Publishing, Inc., 1997 Abridged Edition.
Wade DVM, ABVP, Laura. “Ultraviolet Lighting for Companion Birds: Benefits & Risks. 2009. http://www.buffalobirdnerd.com/clients/8963/documents/UVlightingBirds.pdf
Becker DVM, Karen. “The Essential Nutrient Your Pet Bird Could Be Lacking.” The Huffington Post. 2014. https://www.huffingtonpost.com/dr-karen-becker/pet-bird-health_b_4017365.html
https://www.sageglass.com/sites/default/files/the_hidden_benefits_of_natural_light.pdf
https://www.petcha.com/light-health-for-pet-birds
https://bestfriends.org/resources/lighting-and-bird-health-sunlight-and-full-spectrum-lighting-considerations

Cover Photo by Bob Ghost on Unsplash

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