発情について考える ― Part 1

鳥の行動コンサルタントであるパム・クラークさんの発情に関する情報です。先日開催されたプレミアム会員限定の「鳥寿会議」でもこちらのテーマを取り上げましたが、多くの鳥飼いさんの大きな悩みであることが分かりました。日本とアメリカの飼い鳥事情は異なりますが、当該記事から考えさせられることもあるかと思います。非常に興味深い記事ですので是非ご覧ください。(WY事務局)


発情について考える ― Part 1

一年のうちのある時期、またはある行為に対して、鳥がいつもと違う行動を取ることがあります。いわゆる「発情行為」と呼ばれるものです。今回取り上げるのは、この発情行為についてです。科学的証明や実証資料こそないのですが、鳥の行動コンサルタントとしての私の経験と、専門家、私のクライアントからの実話に基づくお話です。

発情行為とは?

発情行為とは、繁殖のスイッチがオンになることで行われるものです。典型的なものに、誰かひとりに固執する、狭く暗い場所に入ろうとする、敷紙などを齧る、大きな声で鳴く、縄張り意識が強くなるなどがあります。飼い主としては、自分から離れようとしなかったり、狭い場所に入ろうとしたりする姿を見て可愛いと思うかもしれませんが、これが続くと問題です。

このような行為は一定の時期にだけ見られるかもしれませんが、個体によっては、次第に年間を通して行うようになります。さらにそれが、毛引きや自咬、吐き戻し、自慰行為、慢性的な産卵、卵詰まりや総排泄口脱に発展することもあります。あるとき急にこのような行為が表面化することも珍しくはなく、これまでずっと安定していたのに、と驚かれる方も少なくありません。

発情行為ではないものとは?

ここで注意しておきたいのが、発情行為と思われている問題行動の中には、発情とは関係なく、トレーニングなどで解決できるものも多くあります。たとえば、鳴き止まない、噛み付く、などは発情とは関係ありません。発情期になるとホルモンの分泌により興奮状態になることもありますが、それがすぐさま問題行動に繋がるわけではありません。鳴き続けたり噛みついたりすることは、トレーニング不足が原因であることが多いのです。

飼い主の心構え

 犬や猫との暮らしと、鳥との暮らしはまったく異なります。犬や猫は去勢手術を受けることができます。また寿命も大型の鳥に比べると短いので、一生の中でそれほど大きな行動の変化は起こりません。

鳥に対する去勢手術を安全に幅広く行う方法は今のところありません。さらに鳥は一年単位で行動が変わることもあります。私のクライアントの中にも、去年までこんな行動はしなかったのに、と悩む方がたくさんいます。まだまだ我々飼い主側が、鳥たちの行動の変化やそれが彼らに及ぼす影響、その防止策などについて理解が追いついていないと感じています。

賢い鳥たちですから、繁殖可能な年齢になれば、飼い主を使って発情のトリガーを作り出すことができます。また我々が野生と飼育下での環境の違いを把握できていないこともあります。鳥は飼い慣らされた動物ではないことへの理解が必要です。

ある専門家は、我々が見落としている大きな問題が2つあると言います。ひとつ目は、野生の鳥は、繁殖期が終わると発情行為のスイッチを切ること。ふたつ目は、飼育下での豊かで安全な環境が発情期を年中維持させてしまうこと。「いつでも食べられる餌と、飼い主との強い結びつき、快適な住処、たくさんの触れ合い、飼育下でのこういった環境が、年間を通して発情期にしてしまうようです。自然界では、餌が減ったり環境が変わったり、周りとの競争があったりと、繁殖行為を制限する圧力が自然に機能しています。逆にこういった圧力がなければ、発情ホルモンは抑制されることなく持続します」(Van Sant, 2006)

深刻な問題

精神的にも行動的にも、一旦この発情という長いトンネルに鳥が入り込んでしまうと、そこから抜け出すことはとんでもなく難しくなります。発情ホルモンによって引き起こされる行動は、鳥の問題行動の中心となることが多く、これが原因で手放されてしまうこともあります。また鳥にとっても、常にフラストレーションとストレスが掛かっている状態です。

この「発情トンネル」から皆さんの鳥を救うためには、月単位、年単位での継続した努力が必要になります。ですが、これから紹介することを変えていけば、ゆっくりですが確実に効果が出てくるはずです。発情ホルモンを促す主なトリガーには次のようなものがあります。

  • 食事
  • ペアとの結びつき
  • 飼い主の密接な身体的触れ合いと、不適切な愛情表現
  • 巣になる場所を探し、巣作りできる環境
  • ストレスが全くないコントロールされた環境

トリガー1:食事

私がクライアントに渡すアンケートに、「皆さんの鳥の好きな食べ物は何ですか?」という質問があります。回答は大抵同じで、シードミックス、ナッツ、白米、マッシュポテト、パスタ、ブドウ、バナナ、ドライフルーツ、クラッカー、パン、パンケーキ、パイ、ピーナツバター、フライドポテト、人間用のお菓子などです。この食べ物には共通点があります。脂肪分、炭水化物が多く含まれていて、カロリーの高い食べ物、つまり、繁殖するために必要な栄養分です。鳥もこういった食べ物に強く興味を持つので、食べさせてもらえるように飼い主を「教育」するのです。

何をどれくらい与えるか、これが一つ目のトリガーです。脂肪と炭水化物を多く含む食べ物は発情ホルモンを促進します。「必要以上の量の餌、高脂肪・高カロリーの餌、餌の選択肢があまりにも多いと、繁殖欲求のスイッチがオンになります」(Ford, S.2009)

食事対策

発情ホルモンを抑えるベストな食事はペレットと新鮮な野菜です。穀類と果物の量は制限します。上に挙げたアンケートで「好きな食べ物」として挙げられたものは、シードミックスとナッツを除き、必要ないどころか、与えるべきではありません。シードとナッツはトレーニング用のオヤツとして使います。また、オヤツは理由もなくあげない、が原則です。また量にも気を付けます。ペレットは主食として優秀ですが、中には食べ過ぎる子達もいます。メーカーが推奨する量を参考に、適量を与えるようにしましょう。人間との体の大きさの違いを認識しましょう。我々にとってはごく少量でも鳥にとっては適量です。

つづきはプレミアム記事でお楽しみください。Part2はこちら

Pamela Clark, 2019.8.28執筆
翻訳:小林由香

パム・クラークさんより当該記事の翻訳及び掲載許可を得て掲載しております。
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Cover Photo by Irina Blok on Unsplash

(参考文献)

Ford, Scott, DVM, Dipl ABVP. (Date uncertain). Balancing Your Parrot’s Lifestyle. http://www.avian-vet.com/sites/site-2271/documents/asvsa-client%20handouts-balancing%20parrot%20lifestyle.pdf. 

Van Sant, F. DVM. (2011) Hormones: The Downside of the Good Life.[Blog] Phoenix Landing Blog. Available at: https://blog.phoenixlanding.org/2011/04/30/544.

Van Sant, F. DVM. 2018. Hormonal Behavior in Pet Birds – Introduction. [Newsletter] For the Birds DVM. Available at: https://www.forthebirdsdvm.com/pages/hormonal-behavior-in-pet-birds-pt-1.

Van Sant, F. 2019. “Hormonal Behavior in Pet Birds, Part One. For the Birds Blog. https://www.forthebirdsdvm.com/pages/hormonal-behavior-in-pet-birds-pt-1.

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