ロロパーク財団での親鳥による繁殖について

Rafael Zamora Padrón, Scientific Director, Loro Parque
ラファエル・ザモラ・パドロン
ロロパーク財団 サイエンティフィック・ダイレクター

世界一たくさんのオウムの遺伝子備蓄が行われているロロパーク財団では、繁殖の結果、様々な種の雛、平均1000羽程度が毎年誕生します。これらの種は全て、自然界で生存の危機にさらされています。2020年に、私たちは1000羽 以上の雛の誕生を見届けてきて、これらの種のオウムのセーフティネットとなっています。

一部の雛は人工孵化や人工育雛などの補助技術が必要となります。この場合、その後の社会性を身に付けるプロセスを通して若いオウムが自立できるようになるまでにより多くの時間がかかります。昨年と今年は現在までに、70% 以上の雛が親鳥に育てられています。

ロロパークで生まれたヤシオウムの雛

雛が親鳥と一緒に発達してくれることは私たちにとって非常に嬉しいことです。特に、絶滅が危惧されている種を再生息させるために、育ったオウムを野生に放せることは格別です。種それぞれの習慣や習性を学び、正しい食事の仕方やコミュニケーションの方法を親鳥から見つけだすことが肝心です。

ロロパークとロロパーク財団 では、育雛の全過程で、技術者の支援をもらいつつ、バイオセキュリティーを含めた様々な最新テクノロジーを使っています。これらの仕事は特別な状況下でのみ行われ、経験と蓄積データのおかげで、必要な時に野生下でも応用できます。

自然の中では、一番若いペアの最初の子孫はほとんど生き残ることができません。それは、自身の雛の孵化と世話を100% 優先していないからです。制御された環境下では、計画と新技術により、野生では頻繁に見られる落鳥を救うことができます。時にこれが種を存続させる唯一の方法なのです。

人工育雛は簡単ではありません。親から直接餌をもらう雛の成長曲線の方が人工育雛の給餌より常に高いことが明白だからです。しかし、最近の雛鳥用の餌は大幅に進化し、オウムの雛の最適成長を可能にしています。また、餌の配合が良いだけでなく、衛生面や管理などの人間の規律という要素が、雛の成長を成功させる鍵となっています。

人工育雛でよく問題がみられるのが、シロハラインコ属です。これらの種は、食べ物を吐き戻して喉をつまらせないように雛の姿勢を変えたり、成長が遅くならないような餌の工夫が大切です。また、シロハラインコはインプリントが強いため、前のシーズンに生まれた幼鳥と一緒に過ごしながら社会に馴染むまでより長い時間が必要となります。これが、人工育雛された個体が将来、繁殖相手に対して良い振る舞いをするようになる唯一の方法です。これらの要因から、親鳥が私たちの代わりに雛を育てることに成功することは非常に価値あることです。

人工育雛でよく問題がみられるシロハラインコ属
ロロパークでは様々な工夫を凝らし雛の成長を助けている

多くの愛鳥家は、ペットとして飼うオウムは、人工育雛でないと従順で優しくならないと思っています。実はそれは完全な間違いで、親鳥に育てられたオウムの方が人間に優しく接することが多いです。親鳥に育てられたオウムは、自身がオウムであることを自覚しており、前述した人工育雛が不適切に行われたオウムが示すこともある完全な依存という枠を超えることはありません。適切な管理をしなかった人工育雛のオウムは、飼い主と対等だと本当に信じ込み、多くの場合、小さな暴君となりかねません。

どちらの方法も、例に挙げた鳥の精神的健康に関係しています。もし、人工育雛されたオウムが若い頃に同じ種と触れ合わなかった場合、新しい環境と飼養下の生活に適応するのに苦労します。よって、オウムに自身をオウムと自認させるために、同じ種と共に飛び回り、関係を持つ期間を設けなければいけません。

主に繁殖目的でない運命にある親鳥育ちのオウムは、小さい頃から人間と接することが必要です。こうすることで、オウムはほとんど問題行動を起こさない、最高のコンパニオンとなります。

初冬のロロパーク財団では、オーストラリア原産のオクロオウムの雛が数羽生まれ、他のいくつかの種は自立し始めています。その一つとして、4羽のコスミレコンゴウインコ(Anodorhynchus leari)が現在、飛行の練習を始めています。また、ヤシオウムが固形食を慎重に食べ始めたりしています。これらは全て、毎日観察し、必要な場合、修正していきます。なぜなら、自然は常に変化するからです。私たちはその変化を注意深く見続け、適宜行動しなければなりません。

オクロオウムの雛

©2020 Rafael Zamora Padrón – Loro Parque Fundación
翻訳:WING YOU事務局

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