飼い鳥の問題行動の落とし穴 その3

コース5 鳥の問題行動を考える

1時間目その3 ー 飼い鳥の問題行動の落とし穴 その3

コミュニケーションによる問題行動の予防

鳥のコミュニケーション能力は非常に高く、驚くほど繊細なメッセージや気持ちを仲間に伝えることができます。ただ残念なことに、人間は鳥のボディーランゲージに気づかないどころか理解もできないので、メッセージを受け取ることができません。鳥とコミュニケーションが取れるようにするには、そのボディーランゲージに気づけるようにするほかありません。問題行動がエスカレートするときは、このボディーランゲージを理解できていないことが多々あります。

3歳になるヨウムを飼っている女性から、撫でようとするといつも理由なく噛まれると相談を受けたことがあります。そのときのヨウムが目を丸くして首を伸ばしながら、羽を体にぴったりくっつけていなかったかと聞くと、していたとの回答でした。嘴で手を押し返してこなかったかという質問にも、そのとおりとのことでした。つまり、そのヨウムは撫でて欲しくないことを色々な手段を使って丁寧に伝えてくれていたのに、飼い主がそのサインを理解していなかったのです。残された方法は手を噛むしかありませんでした。そして噛むとすぐに飼い主は手を除けてくれました。この話には重要な点が2つあります。ひとつは、噛まないと止めて欲しいという意思を伝えられないとヨウムに教えてしまった点、もうひとつは、鳥にも触って欲しくないと主張する権利があることを飼い主が理解していなかった点です。鳥も人間と同じようにそのときどきの思いがあります。撫でられていつも嬉しいのは私が知る限り犬だけです。

鳥が噛みつくとき

鳥が噛みついてくると、攻撃的になっていると我々は思いますが、実は恐怖の現れであることがほとんどです。飼い主はそれを念頭になぜ攻撃的になっているのかを考えなければいけません。どれだけ大きくても見た目が怖くても、鳥は捕食される側の生き物です。そして人間は捕食者であり、鳥にとって本来、大きくて恐ろしい生き物です。ネットで見たコメントで、鳥がとても攻撃的でいつも子供を噛んで困っているというものがありました。赤ちゃんがケージに指を突っ込んだだけなのに噛まれてしまったというものです。それは鳥が防御しようとした結果であることを伝えられると、その方はとても驚いていました。赤ちゃんというものが何をしでかすか分からないことを本能的に鳥が感じ取り、その攻撃から身を守るために噛んだなんて思ってもみなかったのです。

鳥からのサインを見逃すと・・・

同様に、鳥からの重要なサインを見逃してしまうことで、鳴き声を大きくさせることもあります。オーストラリアの鳥類学者であるジョセフ・フォーショウは「コンタクトコール」と呼ばれる鳥の鳴き方を特定しました。 それは、ある鳥種において、互いに呼びかけをしあうことで群れからはぐれないようにする鳴き方です。飼い鳥もこのコンタクトコールを行います。反応がなければ、返事が返ってくるまで声をどんどん大きくして鳴き続けます。我々が、誰かを呼んで返事がなければ、声を大きくしたり叫んだりするのと同じことです。過剰に大きな声で鳴くことを止めさせるには、まずコンタクトコールかどうかを判断し、そうであれば常に返事を返します。口笛やお喋りなど、普段の鳴き声にも反応してあげるとよいでしょう。逆に最初から大きな叫び声をあげたときは無視します。鳥はとても賢く社会性のある生き物です。これを繰り返すうちに、どの鳴き声で飼い主が反応する、またはしないのかをすぐに学んでくれます。

通常の鳴き声レベルを調べておく

お迎えしようとしている鳥の通常の鳴き声レベルを自分で調べておくことも大切です。ペットショップやブリーダーに聞くよりも実際の経験がものを言うからです。ペットショップもブリーダーも販売優先です。タイハクオウムをお迎えした方から聞いたのは、事前に本を読んでその鳴き声の大きさを知っていたのでペットショップの店主に相談したところ、その本は間違っていると言われたそうです。常識的に考えると、本の著者よりも店主の方が嘘をついて得られる利益が多そうです。

負の強化による問題行動

やって欲しくないことをしたのに、ご褒美と受け取れることを飼い主がしてしまうことがあります。鳥が何か悪いことをしたとき「止めてー!」といった叫び声をあげて反応する方が多いと思うのですが、これを「ドラマチック体験」と言って物事を印象付ける効果があります。鳥は印象的な出来事を楽しむところがあるので、飼い主がこういった反応をすることで、その行為をやめるどころか繰り返そうとします。これが負の強化です。過剰に鳴き叫ぶ鳥はこのドラマチック体験を通してまた同じことをしてしまう傾向があると感じています。この場合、飼い主がその反応を止めない限り、鳴き方も変わりません。

同じことが毛引きにも当てはまります。毛引きを含む羽毛損傷行動は様々なことをきっかけにはじまりますが、その多くの原因は身体的な病気によるものです。同時に、羽を抜くたびに飼い主が反応してくれると、それ自体が鳥にとってご褒美になり止められなくなります。毛引きに気づいたら、まずは鳥専門医に健康診断をしてもらい、身体的な疾患がないか調べてもらいましょう。病気が隠れていないことを確認できたら、行動心理的な面から対処していきます。鳥の行動学の専門家に何が毛引きを誘発しているかを相談してもいいでしょう。長期間に渡り毛引きをしている場合は、その行動が習慣になってしまうこともあります。そうなる前に、獣医師や専門家に相談することが大切です。

飼い鳥の問題行動に対する最大の落とし穴は、正しい情報の欠落と、鳥という複雑な生き物に対する認識のなさです。様々な読み物に触れ、飼い鳥に関する専門知識を持った人達と情報交換し、また自分の鳥をよく観察して学ぶことで、ほとんどの問題行動は解決できるようになります。

(2013.7.30 Liz Wilson 執筆記事)
翻訳:小林由香

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