飼い鳥の問題行動の落とし穴 その2

コース5 鳥の問題行動を考える

1時間目その2 - 飼い鳥の問題行動の落とし穴

鳥にとって自然な行動 VS 飼い主の捉え方

鳥の自然な行動飼い主の捉え方
   (問題行動と捉える)
   
木の枝や葉を齧る家具や窓枠、高価なアンティークや書類を齧る
おもちゃを齧るコンピューター機器や電気コードを齧る
通常の鳴き方(甲高く鳴く)うるさい鳴き声(数時間鳴き続ける)
敵を追いやるために噛みつく飼い主を嫌がって噛みつく
食べ物を投げたり落としたりすることで、種を撒いて森を育てるカーペットや本に物を落として汚す
すべて自分(鳥)のものだとみなすすべて自分(人間)のものだとみなす
叫ぶ叫ぶ
問題に直面する(鳥のせいで)問題に直面する

鳥の自然な行動 = 「問題」行動

鳥にとって当然な行動が、人間との暮らしの中では問題行動と捉えられることがよくあります。人間の都合に合わないというだけで問題行動だと嫌がる何とも傲慢な考え方です。たとえば、齧るという行為は鳥にとっては仕事のようなものですが、飼い主は問題行動と捉えます。人間がどう思うかに関係なく、放鳥中に飼い主が目を離せば、色々なところを齧って破壊します。これは鳥のせいではなく、放鳥中に鳥に十分に注意を払っていない飼い主の落ち度です。

また鳥がよく散らかすとイライラする人もいますが、モノを放り投げたり落としたりするのも鳥の自然な行動で、訓練して止めさせられるものではありません。クリスという仕事仲間があるとき素敵な話を教えてくれました。「神様はとても美味しい実が成る木をたくさん使って熱帯雨林を創りました。その美味しい実はすべて木のてっぺんにできたため、地面で暮らす小さな生き物はその実が食べられないと不満をこぼしました。それを聞いた神様は鳥を創り、その実をひとくち齧らせ、残りを下に落とすように言いました」 クリスが言うように、鳥が食べ物を落としたり投げたりするのは、神様の仕業です。これはおとぎ話ですが、それでも鳥が散らかさずにはおれない生き物であることは間違いありません。鳥にとって普通の行動が、人間には問題行動になり得ます。

鳴き声が大き過ぎることもよく相談されますが、実際にその声を聞いてみると、「過ぎる」レベルでは全くないことが多いです。高い声や大きな声を出すことは鳥本来の機能であり、止めさせることはできません。アパートやペット禁止住宅などで問題なく飼える鳥種のほうが珍しく、そんな状況で飼われること自体が鳥にとって不当なことです。「静かな」鳥種ですと本に書かれていたとしても、それは声の大きい鳥に比べたら「静か」というだけです。本当に静かなペットと暮らしたいのであれば、鳥ではなくて爬虫類がおすすめです。

飼い主の問題=鳥の問題

鳥を飼いたい理由に、単にカッコいいから、綺麗だからと言う人もいます。鳥を飼うブームが起こっていますが*1)、どの動物にもペットブームが来ていいことなどありません。流行りのものを持つことがカッコいいと思って欲しがる人もいます。自分を良く見せたいだけであれば、他の方法で自分をイメージアップする努力をして欲しいものです。動物を飼ったからといって飼い主はカッコよくなりません。

他によくある状況が、自分だけに懐いて他の誰にも懐かないことを嬉しいと思うことです。不安なときに、鳥がぴったりと側にいてくれると、とても嬉しいものです。でも鳥はどうでしょうか。殆どの鳥は群れで暮らす生き物です。そのため、たったひとりの人間としか関りが持てないことは精神衛生上健康とは言えません。ですが、鳥がその問題を行動として現わさない限り、その状況を変えない、または変えようとも思わない人が殆どです。たとえば、毛引きに関する相談を受けて話を聞いてみると、その鳥が飼い主以外の家族には噛み付くことを何年も放置して、問題視していないことがあります。ひとりに過剰に依存してしまうことが毛引きとして現れて初めて、他の家族との間にも鳥との関係性を築く必要性に気づくことがよくあります。

知識による問題行動の予防

問題行動として現れる前に予防することが大切です。鳥の行動に関して書かれた良い本はありますが、どれだけ本から知識を得ても、神秘に溢れた鳥との暮らしに十分に備えることはできません。どれだけ事前に育児本を読んでも、実際に子供ができてみたら準備が足りなかったと思うのと同じです。本が説明できることには限りがあります。鳥の問題行動を予防する最初のステップは、鳥はそう簡単に人間との暮らしに順応できないことを理解することです。人の手で繁殖されても野生動物なのです。順応できるかどうかは飼い主次第です。

トレーニングによる問題行動の予防

人間との良い関係性の築き方を教えるのも飼い主の仕事で、その一番近道がトレーニングです。「アップ」「ダウン」の掛け声に合わせて手に乗り降り降りしてもらうステップアップトレーニングは、鳥の行動学研究で有名なサリー・ブランチャード氏が提唱したものですが、このトレーニングはとても効果的で私も何年も使っています。掛け声を正しく使えるようになれば、鳥の行動をコントロールできるようになるだけでなく、鳥も自分の立ち位置をよく理解するようになります。鳥は人と暮らす中でも、自分のやりたいように行動するものですが、明確で一貫したルールを定着させてあげることで、期待されている行動が何かを理解していきます。私が飼っているいるルリコンゴウインコは家族と一緒に晩御飯を食べますが、自分用のお皿を認識させて、他の人のお皿から食べないようにルール付けしています。来客があったときも同じルールで指示することで、普段と同じように自分のお皿からだけきちんと食べることができます。

基本のトレーニング

  • アップの掛け声で手に乗ることを教える
  • ダウンの掛け声で手から降りることを教える
  • ノー(NO)が意味することを教える。ノーの掛け声で行動を止めることを教える
  • グッドが意味することを教える
  • 自分ひとりで楽しめる遊びを教える
  • ケージ中でひとりで楽しめる手段を教える
  • 飼い主と数時間離れても、不安にならないようにトレーニングする

その3につづく

*1)記事が執筆された当時

(2013.7.30 Liz Wilson 執筆記事)
翻訳:小林由香

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Cover Photo by Mohamed Elsayed on Unsplash

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