ロロパーク財団による持続的な保全活動

Rafael Zamora Padrón, Scientific Director, Loro Parque
ラファエル・ザモラ・パドロン
ロロパーク財団 サイエンティフィック・ダイレクター

カナリア諸島が夏を迎え、ロロパークに今年1000羽目となる雛が生まれました。

毎年秋が始まる頃には、約1000羽の雛がロロパークに誕生します。繁殖シーズンに鳥たちのペアリングを成功させるため、繁殖チームは弛まぬ努力を重ねています。繁殖の成功は、世界最大の鳥の保護区であるロロパークの持続性をより高めることになるからです。

繁殖率を上げるためには、ペアとなる鳥を研究し理解することが大切です。そのためには、前年のペアとその繁殖結果の分析が欠かせません。繁殖が成功する大前提としてペアの相性がありますが、同時に、繁殖期を迎える鳥たちが、それぞれ仲良く調和した行動が取れる環境を整えることも重要です。その環境づくりのためにも、研究と観察を継続して行う必要があります。食事の面でも分析と改善が大切です。ロロパークでは、その時々の状況や鳥種によって常に食事内容も調整しています。

繁殖活動においては獣医師も重要な役割を担っています。季節や時期によって体調の変化などがないか獣医師が診断を行います。巣立ち間近の雛に内視鏡検査を行う際、状態をよく観察することで、親鳥の健康状態を診断することもできます。雛に何らかの問題がみられる場合は親鳥の検査を行い、繁殖に影響するような管理環境の有無や変更すべき点がないか確認します。

ロロパークの獣医師による内視鏡検査

施設内と同じく、フィールドプロジェクトでも常に保全活動を行っています。例えばキューバでは、生物学者マイケル・カニサレス氏が密猟されかけていたホシメキシコインコの雛2羽を救出しました。

カニサレス氏がこの地域にある巣の確認や自動撮影カメラによるフィールド調査を行っているときに、地元のある家族がホシメキシコインコの雛2羽を連れてきました。彼らはロロパークが現地で行った啓蒙活動に参加しており、一旦、巣から雛を奪ったものの、戻すことに決めたのです。保護された雛はまだとても小さかったのですが、管理された環境下で最新の技術を持って育てられた結果、無事に巣立ちすることができました。

巣から奪われ戻された雛たち

ロロパーク財団では、保護した鳥を自然に返す活動を様々な場所で行っています。このホシメキシコインコの雛たちにも自然環境に適応させるための準備を行いました。まず雛たちに自然の中で果物を食べることを学ばせ、自然環境に順応させました。雛を密猟しようとした人達にもこの準備に参加してもらい、最後は彼らの手から成長した雛を自然に放ちました。雛たちは彼らの手の中から力強く飛び立っていきました。この活動は、様々なレベルでの保全活動の重要性を実感できる成功例となりました。  

野生に戻される鳥

ロロパーク財団We Care!

©2020 Rafael Zamora Padrón – Loro Parque Fundación
翻訳:小林由香

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