飼育下での繁殖、種の未来

Rafael Zamora Padrón, Scientific Director, Loro Parque
ラファエル・ザモラ・パドロン
ロロパーク財団サイエンティフィック・ダイレクター

飼育下において鳥の繁殖を成功させるには、献身的なケアと観察、それを行うための人材や物資、そして何よりも知識が必要です。

一昔前までは、解剖後の動物標本が欲しいときや生物学的パラメータ（生物を比較するときに基準とする項目）を研究したいとき、科学者は博物館にある標本を頼るほかありませんでした。今でも博物館の標本は過去を知るために重要ですが、それ以上に生きた標本を管理している保護区の重要性が認識されています。生きている鳥からは、成長過程で変わっていく羽や色の変化を知ることができたり、遺伝子学の研究に欠かせない血液サンプルを採ることができます。絶滅危惧種に対しては、鳴き声などの基礎データを詳しく記録しておくことが欠かせません。食事や行動、健康に関することなど、数え切れないほどの大切な情報を生きている動物は提供してくれるのです。

ペットを飼っている人がそうでない人と比べて、自然保護に関してより敏感で、さらに深い知識を持ち備えていることは明らかです。

動物を飼育するには特別な洞察力やセンスが必要です。それがあれば、今、地球が抱えている環境問題についてもより理解することができるのです。

ロロパーク財団はこういった考えを自分たちの哲学としてとても大切にしています。ロロパークの繁殖センターでは世界一を誇る数のオウムやインコが飼育されていますが、一般家庭で飼われている鳥種の繁殖も行われています。自然の中では生き物は互いに依存しあって存在しているため、種の保全は全ての生物に共通する重要な課題です。飼育下での繁殖データや知識を蓄積していくことが、野生種を救うカギになるかもしれません。

また、ペットと暮らしている家族や繁殖に成功しているブリーダーも、この種を保全するための輪の参加者です。動物と一緒に暮らしたいという人間の欲求を、野生種を現地で捕獲することなく満たすことができるシステムを構築しているのです。種が共生することは互いに多くの利益をもたらすだけでなく、地球の環境保全にも大きく貢献します。

動物に関する知識を持つ一般の人々のネットワークにより、これまでに多くの生物が絶滅から救われてきました。日頃から動物を育てたり生活を共にしている人は、自然保護に関しての理解と協力、また参加する準備ができている貴重な仲間なのです。

この時期になるとロロパークは繁殖期を迎え、約1000羽のヒナが孵化します。非常に嬉しい数ですが、鳥たちの活動が活発になるため飼育チームにはより一層の努力が求められるうえ、鳥種に合わせた厳格な手順や基準に従い、慎重な管理が必要となります。

種の保全と健康管理に並行して、異種産業の発展も非常に重要です。ペットにより良い食事を与えたいという人たちが世界的に増えたことで、動物の種類に特化したペットフード産業が発達してきました。ロロパークのスポンサーでもあるベルギーのVersele-Laga社は、さまざまな種類のオウムやインコのさし餌用フードを定期的に新しく開発しています。またブリーダーなどのプロ用と一般の家庭用向けに、体調管理や繁殖用のフードを鳥の様々な状態に合わせてミックスして開発しています。このような企業の協力も種の保全には欠かせません。さらにペットフード業界の進歩は、絶滅危惧種回復センターやフィールド保全プロジェクトにも役立ちます。回復期間中、体調を良好に維持するための食事として使えますし、野生に返すためのプログラムや密猟者からレスキューした場合などの緊急時にも使えます。レスキューされた鳥には状況に合わせた適切な給餌が必要になるからです。

みなさんもロロパークが行っている保全活動に参加してみませんか。ロロパーク財団の会員になれば、絶滅の危機に瀕している動物たちの保護活動に直接参加することができます。 We care! プログラムに是非ご参加ください。

ロロパーク繁殖センターの最近の繁殖例