繁殖期に考慮すべきこと

Rafael Zamora Padrón, Scientific Director, Loro Parque
ラファエル・ザモラ・パドロン
ロロパーク財団 サイエンティフィック・ダイレクター


毎年の繁殖期になると、飼育者は「注意力」と「記憶力」が求められる難しい状況に直面します。過去の経験をもとに、タイミングや方法を見極め、適切に対応していく必要があります。

ベテランのブリーダーでも、前のシーズンでうまくいった細かい工夫を忘れてしまうことがあります。しかも、ペアごとに状況は異なり、予想外の反応があることも。このうえ、気温や湿度など自分たちではコントロールできない外的要因も加わってくるのです。

だからこそ、毎年の気づきや対応策を記録しておくことをおすすめします。いざという時に役立ちます。


繁殖のステージごとの注意点

■ 一斉には始まらない

すべての鳥が同じタイミングで繁殖するわけではありません。同じ種類の鳥でも個体差がありますし、年齢によっても状況が異なります。今まさに繁殖中のペアもいれば、隔離中の個体、来季に向けて準備中の若鳥もいます。グループごとに異なる対応が必要です。

若鳥に対して、繁殖ペアと同じ栄養補助を与えるのは避けましょう。また、産卵を始めたばかりのペアと、すでに育雛中のペア、しばらく繁殖していないペアでは、食事量や内容も調整する必要があります。


繁殖準備期

  • 果物よりも、野菜や一年草のハーブを多めに与えましょう。
  • 種によっては、卵や昆虫など少量の動物性タンパク質を与え始めます。
  • 水浴びや人工的な霧・雨で刺激を与え、繁殖本能を促します。
  • 巣材を新しくしたり、かじる用の木片や樹皮を与えて、環境を整えます。

繁殖期

  • メスが最初の卵を産んだら、オスにも柔らかい食事と葉物野菜を与えましょう。
  • ペア間での争いを避けるため、食事量を増やすことが大切です。
  • 複数の餌入れを使い、場所を離して配置するとさらに良いです。
  • 抱卵中のメスとオスには、ヒナの給餌を見越して、卵タンパクを含む柔らかい餌を少量ずつ与え始めましょう。
  • ヒナが孵化したら、柔らかくて高タンパクな餌を中心に、食事内容を充実させましょう。

ヒナの分離と独立

  • この時期は特に注意が必要です。多くのペアが2回目の産卵に進むことがあります。
  • ヒナをメスと分けるタイミングは種によって異なり、判断が難しいこともあります。
  • 仕切りネットを活用し、ヒナが自分で食べられるようになったら、親鳥と同じ餌を与えつつ独立させましょう。
  • 種は少し砕いておくと、自分で殻を剥く練習になります。
  • この頃にはオスとメスに同じ餌を与えて構いませんが、最初の繁殖で消費しなかった分を調整して、与えすぎないよう注意が必要です。
  • オスが太りすぎると、次の繁殖で精力が落ちるおそれがあります。

抱卵・育雛中の水浴び

  • 繁殖中は水と水浴びの機会がとても重要です。
  • 天気が許す日は、午前中の暖かい時間帯に水浴びできるようにしましょう。
  • 水浴びは羽の清潔を保ち、保温性を高め、寄生虫の予防にもつながります。
  • メスが巣の中でお腹を汚すのは普通のことです。羽が折れているように見えることもありますが、健康への影響はありません。
  • ヒナが孵化する2〜3日前にメスが自発的に水浴びすることは、特におすすめです。水浴びによって卵の湿度が上がり、殻が割れやすくなります。
  • 反対に、乾燥しすぎた環境では孵化トラブルが発生しやすくなる可能性があるため注意が必要です。

静かな環境の確保

  • 特に、ペアが交尾前の求愛行動をしている時期は静けさが重要です。
  • 鳥など多くの種では、お互いを知り合うこの段階で邪魔が入ると、関係に悪影響が出ることもあります。
  • 他の大型種や騒がしい鳥を、視界に入る場所に置くのは避けましょう。
  • また、繁殖エリアには外部からの訪問者を控えめにして、鳥たちにとって安全な環境であると感じさせてあげてください。

静けさを保つことで、以下のようなトラブルを防ぐことができます:

  • 卵の破損
  • 巣の外での産卵
  • 交尾の中断
  • 縄張り争いの悪化(特に攻撃的な種)

©2025 Rafael Zamora Padrón, M.Pérez – Loro Parque Fundación
翻訳:WING YOU事務局
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