lostbiography    忘れないこと

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大切な命のために忘れてはいけないこと 

鳩の仲間で絶滅鳥種の代表的なのは 北アメリカに生息していたリョコウバトでしょう。
ハトの仲間でも大型で体長は約40㎝にも達したといわれています。
色彩も美しく背中から尾にかけて鮮やかで深みのある青色、のどから胸にかけては輝くようなえんじ色でした。
メスはオスより地味な色合いでした。

現在 世界の人口は50億を超えるといわれていますが リョコウバトは発見当初(18世紀初頭)50億羽がいた、
と記されています。
リョコウバトはヨーロッパ人が新大陸を発見する以前から繁栄していて先住民インディアンもリョコウバトを
捕獲して食料にしていました。
でも、繁殖期や育雛中の捕獲は禁止していましたし、必要以上の数をとることは決してしませんでした。
当時、人と鳥たちは、お互い平和に過ごしていたといえます。
大量に生息していたリョコウバトでしたが 繁殖力は弱い鳥でしたのでインディアンたちは、よく理解して
付き合っていたのだと思われます。
1810年ごろの観測記録ではひと群れで2億羽が数えられたと記されています。
この鳩は北アメリカに生息しており、その名の通り長距離を渡る鳥でした。
夏、北アメリカ東部に暮らし、冬にはメキシコ湾岸地域まで渡っていたといわれていました。
長距離を飛ぶため翼も強く飛ぶ速度も速い鳩でした。(i時速100km程度と記録されています)
鳩たちの渡りの際には太陽の光も遮られそれが3日も続いたという記録も残っています。

1800年代に入り ヨーロッパ人がアメリカ大陸に入植してくるようになったことが悲劇の始まりでした。
人間は森林を伐採し 開拓していきましたが、それはハトたちにとってえさ場や生息地を破壊するだけの
行為でした。
餌が少なくなった鳩たちは農作物を荒らすようになり、結果目の敵にされて殺戮されるようになりました。
害鳥駆除というだけではなく 長距離を移動するこの鳥の肉はおいしく、食肉としての需要も拡大しました。
1805年、1羽1セントで取引されていましたが数年後には、1ダーズ1ドルまで跳ね上がり、鳩の取引が拡大して
いきました。
鳩の取引価格が高額になったことで収入増加になったことも鳩の捕獲殺戮に拍車をかけました。

やがて東部から西部を結ぶ鉄道が開通すると ハトを輸送して売ることで収入を得る人たちが増えてきました。
羽毛は布団の材料に、肉は食料にと、毎年数十万羽という鳩たちが殺戮されていきました。

1850年ごろ 研究者たちはリョコウバトの生息数に危機感を持っていたようです。
1860年代末~1870年ごろ、リョコウバトの危機を感じた各州において保護法案が可決されていきましたが
すでに手遅れでした。
1880年代 すでにリョコウバトはなかなか見つけられない種にまでなっていました。
1896年には 約25万羽のみが生息していたといわれています。
その年の4月 ヒナを育てるため最後の群れがオハイオにわたってきました。
ハンターたちは当時開発されたばかりの電報で情報をやりとりし、オハイオで育雛中の群れを狙い撃ちにしました。
この時 約20万羽が殺戮され、4万羽が傷つき、捕獲されたといわれています。
当然親を失った雛には生き残るすべはなかったのです。
残ったのは約5000羽程度でしたが もともと繁殖力の弱い鳩たちにはすでに未来が残されていませんでした。
1899年 最後の野生の鳩がオハイオで撃ち落され、野生での絶滅が宣言されました。
それでも数羽のリョコウバトが飼育下にいて なんとか絶滅を防ごうと努力したオーデュボン協会委員の
ガイ・ブラッドレイは1900年3月銃殺されました。

飼育下で最後に残されたのは1909年、シンシナティ動物園に持ち込まれたオス2羽,メス羽のみでした。
やがて1910年、オスが相次いで落鳥し、最後にメス1羽が残りました。
最後まで飼育されていたリョコウバトはマーサとなずけられで大切に飼育されていました。
マーサの名は 大統領夫人マーサ・ワシントンから名付けられ、手厚く保護されていまいた。
1914年9月1日 午後1時、最後のリョコウバトマーサが死亡しました。29歳でした。
これを最後に リョコウバトは地球上から永遠に姿を消しました。

世界人口を超えるかといわれ、世界中で一番繁栄した種でしたが 人に発見されてからわずか300年ほどで
すべての命が消滅したのです。

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コメント

  • コメント ( 2 )

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  1. いつも貴重なお話有難う御座います。
    絶滅の話で身近にあった事を思い出しました。今の場所に住みはじめた頃、庭の山椒の木にアゲハ蝶が良く来ていましたが、2、3年後にはいなくなりました。山椒や他の草花の葉を食べるからと家の者が幼虫を駆除した結果、虫がいなくなったのです。家族は動物に感心が無く、好きでも嫌いでも無い人です。でも多くの生き物に感心が無い人たちがする行為によって生き物がいなくなって行く気がしています。山椒や桑に実が付かなくなって久しいですが家族はまだその訳を解っていません。感心が無い人たちにも生き物と人間の関係を考えてもらわなければ人による動物の絶滅は終わらないと思っています。

    • 貴重なお話ありがとうございます。どんな動物でも、植物でもなにかしら助け合い、影響しあいながら生存しています。人間のみが自己都合で動物たちの命を奪うことは、許されないことだと個人的には思っています。虫が嫌いだからと駆除してしまうと当然実を結ぶこともできなくなる。駆除されると親虫もそこには近づかなくなる。どの命もお互いがかかわりあっていることを多くの人にりかいしていただきたいですね。大切な自然の営みが壊されることもなく続いていける世界になってほしいと思います。

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