翻訳後記12 – 病院について(つづき)

翻訳後記12 – 病院について(つづき)

連投失礼します。

前回の続きです。

客観的事実だけをを伝える

掛かりつけ病院について情報をもらう中、一つのことに気づきました。

「親切でしっかり診てくれる」「話をよく聞いてくれる」「優しい先生」そいうい内容を多々頂きました。中には「病気は直してくれたけど、先生が怖い」「愛想がないぶっきらぼう」のような感想もくれる方もいました。

こういうことももちろん大切ですが、何をもって「優しい、怖い、ぶっきらぼう」と判断するかはその人次第です。Aさんにとっては愛想がないと感じてもBさんにとってはそうでないかもしれない。私自身ももちろんその感想を持つわけですが、それは私個人の印象であって、他の人は違う印象かも知れません。

そして鳥専門病院であっても先生の印象で賛否が分かれるところもありました。

掛かりつけを集めるということで始めましたが、ことはそう単純ではなさそうです。

何が大切かを考えました。まず最初に、鳥をしっかり診てくれる病院が少ない。診れるか診れないかそれが大事だと判断し、以下の基準で掲載することにしました。

1. 明らかに鳥専門の病院(名前が鳥の病院になっているところなど)については、病院名のみを記載し、それ以外の情報はHPを見てもらう。

2. 鳥専門病院ではないが、鳥専門医と思われる獣医師がいる、また鳥の臨床経験が多そうな病院や獣医師がいるところについては、主観的感想ではなく、なぜ通院したか、どのような治療、診断を受けたかの事実のみを聞き取りして記載する。

また、ここまでの治療はできるがこれ以上は〇〇を紹介するなど、治療範囲をしっかり把握し、専門病院との連携を取っておられる病院についてもその旨を記載した上で、掲載することにしました。

一方、飼い主さんからの情報が十分ではなく、HPなどを見ても鳥の臨床実績が確認できない病院については、飼い主さんに丁寧に説明をして、更なる情報が入ってくるまで掲載を保留することにしました。

地方の病院

そんな中、やはり地方に行けば行くほど、専門医はおろか鳥を受け入れてくれる病院を探すのも一苦労なことがわかってきました。

鳥は診れませんと断られてしまう、そういう病院も多くあります(ある意味それは正直で誠意ある病院かもしれないと個人的に思っています)。

ある地方の方から病院をご紹介いただいたとき、治療内容からして専門的には診れない病院の可能性が高いと思い、保留させていただきたいとお願いしました。

するとその方から、「この辺りでは鳥を受け入れてくれるところがここしかありません。確かに簡単な処理しかできないとは思いますが、この地域にとってはとにかく「来てください」と言ってもらえることが大切なんです、それだけでも本当にありがたいのです」という回答をいただきました。

続けて、「車で高速で片道2時間かければ専門医がいるのは知っています。でもそれができない人は鳥を飼ってはいけないのでしょうか。私たち家族はこの子を大切に飼っています。自分たちのできる精一杯のことはやります。でもいろんな事情で片道2時間車で病院に通うことはできません。そういう人は鳥を飼ってはいけないのでしょうか」とご連絡をいただきました。

私の個人的な意見としては、実際に車で片道2時間以上かけて専門医さんに通っているフォロワーさんも何人も知っていますし、毎回でなくてもいいから専門医さんに一度でもいいから行ってみてほしい、カルテだけでも作っておいて欲しい、そう思いました。

でも一方で、誰もが長時間かけて病院に通えるわけでもありません。家庭の事情やお金の事情などもあるかもしれません。それは個人個人で事情が違いますし、他人がどうこういうものでもありません。

何回もこの方とやりとりを重ねて相談し、詳しい説明をつけて掲載することにしました。

翌年の更新時にこの病院は飼い主さんのお申出もあり、そして私個人も再度色々調べて熟考を重ねた結果、掲載から削除することになるのですが、同じような理由で、説明をつけて掲載している病院は他にもあります。

とても考えさせられる体験でした。

口コミ情報

たくさんの方から情報をいただき、その都度、病院のHPを隅から隅まで見て、先生の名前をググって情報収集し、鳥類臨床協会のHPに名前が載っているかも検索しました。

そしてしつこいと思われてもいいので、必要があれば何度も情報提供者さんと連絡を取り、できるだけ細かく詳しく診察の内容を聞き取りしました。皆さん誰も文句も言わず、二つ返事でご協力くださいました。

口コミサイトも見ました。内容を参考にするのではなく、どれほど鳥に関する投稿がされているかの参考値としてみました。口コミ本体は読みはしますが、掲載可否の参考にしないようにしました。皆さんもご承知の通り、口コミは参考になるかもしれないけど、その信頼度は測れません。

数件の口コミで評判の悪い先生がいたとします。その先生の素性は知れています。どの病院でどんな治療をしているのかも公開されています。一方、悪い口コミを書いた方の素性を我々は知りません。あるのはその文章だけです。

その時、なにを理由に我々はその先生を否定して、口コミの方を正とするのでしょうか。もちろん、実際に行ってみたら、同じ感想を持つかも知れません。でもそうでない場合もあるかも知れません。

口コミだけ見てこの病院には行きたくないと思っている方がもしいらっしゃれば、どうか一度、鳥さんが健康な時に爪切りなどで行ってみてください。結果、自分に合わなければもうやめればよいし、もしかすると素晴らしい先生との出会いが待っているかも知れません。

実際にこの病院リストを見て行ってくださった方の中には、口コミが悪くて心配だったけど、実際はそんなことなかったとご連絡をくださる方もいます。もちろんその逆もありうることも承知しています。

大切な言葉

そんなこんなで病院リストを実際に作り始めると、最初は想定していなかった奥深いことがたくさんあることを知り、完成までの道のりの中、何度も悩み迷いました。

そんなとき、TSUBASAのセミナーで講演されたある鳥専門病院の院長の言葉を思い出し、それを支えにしていました。一字一句その通りではないと思いますが、このようなことを仰られたのです。

「経験値が高い専門医でも、どうしても助けてあげられない命がある。力を尽くしても、救ってあげられなかった命が僕にもある。とても悔しく思う。でも全ての鳥さんを治してあげることはできない。

だからこそ大切なのは、飼い主さんと獣医師の信頼関係です。

この先生に診てもらえた結果であれば、それがどのようなものでも受け入れられる。そう思える先生と皆さん、出会ってください。」

私はこれがすべてだと思うのです。

そう思える先生に出えれば、それで良いのではないか。もちろんそう思うには、鳥を治療してくれるという確かな技術の裏付けがあってのことです。でもこれが病院や先生を探すときのすべてだと私は思うのです。

おわり

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コメント

  • コメント ( 8 )

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  1. 病院リストの作成は時間がかかるだけでなく、情報の精査や更新も必要。飼い主さんそれぞれの考え方や価値観も違いますから、客観的な情報提供に留めないとならない難しさもありますよね。

    この病院リストに助けられている鳥飼いさんは大勢いらっしゃると思いますし、日本で暮らす鳥さんを間接的にサポートしていることになっているので素晴らしいと思います。

    そして、シェアしてくださった先生の言葉。

    飼い主さんと獣医師の信頼関係

    これに尽きますね。
    日本に鳥「を」診れる病院がもっと増えてくれることを願っています。

  2. yucakyさん、改めてこの
    サイトからこんにちわ!
    です。
    真摯な思いと並々ならぬ
    努力の証といえるリスト
    作成、本当にありがとう
    ございます。作成にあた
    り単にリストアップした
    だけではなく情報の分析
    と調査を何度も踏まえ、
    できるだけ客観性をもた
    せる事で、より選択しや
    すいようにとご努力され
    たのが溢れています。
    愛鳥家の皆さんと鳥の事
    を思いながら作られたの
    ですね。
    尊敬と感謝の気持ちで
    いっぱいです‼️
    リストに載せられなかっ
    た病院、遠くて通えない
    なら鳥を飼ってはならな
    いのか、医師との信頼
    関係等のお話は私も
    色々考えさせられました。
    (今回割愛させて頂きます)
    私達鳥飼いにとって病院
    は切り離す事ができませ
    ん。そして地方になれば
    診れる病院も更に限られ
    てきます。
    いつも話題になりますが
    掛かり付けが休みの時や
    夜間に何かあった時の
    不安は常に付きまとい
    ます。まだまだ鳥の病院
    に対する課題や思いは、
    尽きませんがyucakyさん
    の渾身の思いが詰まる
    病院リストをたくさんの
    愛鳥家さんが活用して
    下さる事を真に願います。

  3. WYさん
    これを見た方に先入観を与えないように、というのを一番大切にしました。

    先入観を持ってしまったために、病院に行くことを悩んで、鳥さんの処置が遅れてしまったら元も子もないですもんね。

    今でも、継続的に紹介いただいているのですが、悩むことも多々あり、そんな時はこの先生の言葉を噛み締めています。

    そして鳥専門医のみなさんは本当に鳥愛に溢れた方が多く、そんな先生方を支えられるような鳥飼いにもなりたいといつも思います。

  4. まーぼさん
    協力者のみなさんの熱意と想いにたくさん後押しされて、すごいパワーをもらえたから作れました。

    これをまた一から作れと言われたら、できるかどうか分かりません(^^;;

    このときはすごい力をみんなからもらって、自分でもびっくりするくらい集中しました。

    今でも情報提供くださる方はいるし、年に一回は更新活動をする予定なので、みんなでみんなの鳥を支えるを合言葉に長く続けていきたいです。

  5. こんにちは。

    >飼い主さんと獣医師の信頼関係

    開業獣医師の難しいところはそこだと感じています。
    私が信頼する先生は以前?「とても怖い先生」と言われてました。<今もかな?
    飼い主の、危うい飼い方や接し方による、病気や怪我が多いためです。
    そのため厳しくならざるおえないとは思いますが、あの先生は厳しいからと来なくなる飼い主さんもいて、実にもったいない話だと感じていました。
    当時、先生に進言したことがあります。
    -患者(鳥)を診るのは当然だけど、飼い主も診ないとダメなのでは?-
    鳥も人も診る、その行為が信頼を得るカギだと思っています。

    どんなに名医でも命を救っても、飼い主に寄り添えないと離れていってしまう。
    救える命も救えなくなる。
    口コミは飼い主の心情により大きく変わります。
    所詮、評価をするのは飼い主なので、単に医療技術だけでは評価できないところがあるようですね。

  6. yucakyさんを知る前から、病院リストを拝見していました。主観を入れないように配慮されていて、病院を探している方の必要としている出来ることの情報が簡潔に記されています。
    yucakyさんの病院リストにも、最後の先生のお言葉にも、飼い主の手中に常に愛鳥の命があることを思い知らされます。
    とても参考になる素晴らしいリストをありがとうございます!作成も並々ならぬ時間と労力を費やされたと思いますが、更新も大変な作業ですね。わたしもお役に立てるように、訪れた病院の情報を書き留めておきます!

  7. べべべさん
    まさにそのとおりですよね。口コミは飼い主の心情によるものなので、人によって変わって当然だと思います。

    だからこそ、それだけに頼らず自分の目でも確認していただけたらと思います。それで助かる鳥さんの命もあるかもしれませんもんね。

    鳥を愛するが故に、適当な飼い方をしてしまう飼い主さんに対してキツく当たってしまう先生のお気持ちも分かる気もします。このサロンにいるような意識の高い鳥飼いさんではない方もたくさんいらっしゃるでしょうし。

    こういう場がもっとたくさんの鳥飼いさんに知られて、全体的なボトムアップにつながるといいなと思います。

  8. CAPTAINさん
    病院リスト見てくださってありがとうございます!

    たくさん病院を見つけたいけど、数が多ければ良いわけではないので、その線引きがいつも難しいです。

    都市圏だと病院の選択肢があるけど、地方ではひとつどころか、ゼロのところもありますので、これから鳥医療を目指す方が増えて全国に広がってくださればいいなと思います。

    そのためには鳥飼い自身も意識を高めて、先生のご苦労も理解して一緒に鳥の健康を支えていけるようになりたいです。

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