Rafael Zamora Padrón, Scientific Director, Loro Parque
ラファエル・ザモラ・パドロン
ロロパーク財団 サイエンティフィック・ダイレクター
カナリア諸島では気温や湿度に急な変化がなく、気候も温暖なため、鳥たちは季節の変化に徐々に順応することができます。季節が秋に向かい、日照時間が少しずつ減り始める9月は、ロロパークにいる多くの鳥にとって大きな意味のある月です。
鳥や動物はこの微かな季節の変化も敏感に感じ取り、多くが繁殖休止期に入ります。ただし、南半球原産で、この時期まで繁殖活動に入っていなかった鳥は、ここから繁殖の準備を開始します。オースラリア原産のクロオウムは、まさにこの時期に繁殖のスイッチが入ります。9月は気温が下がり、雨の日が続くのですが、これもクロオウムを刺激する要素です。
その年初旬に生まれた雛は、9月頃になると雛換羽が終わり、運動量を増やさなければいけない時期を迎えます。午前中と午後に放鳥し、仲間と飛ぶことで、社会性も身につきます。そしてこの頃、ロロパークの保全活動チームは鳥種の習性観察を始めます。
ロロパークでは異なる鳥種ペアの活動も活発です。環境エンリッチメントを通して、鳥たちが刺激を受けられるようにしています。保全活動チームが環境エンリッチメントに使っているものに軽石があります。この軽石は、地球最大級規模の火山島のひとつ、テネリフェ島から採取でき、大きいものでも中に多くの気泡を含んでいるため、我々は火山の泡呼んでいます。
ロロパークの園長、Marcia Weinzettleは、この軽石が硬さと多孔質な柔らかさを同時に持ち合わせており、水にも浮くことに気付きました。色はカルシウムやナトリウム、シリカ、カリウムなど、含まれるミネラルの割合によって異なりますが、軽い素材のため多くの鳥種に使うことができます。
クリムネインコは岩場の崖に巣を作るので、巣材としてこの軽石を与えることができました。木に巣を作るハシブトインコにはこの軽石を巣の土台として与えましたが、嚙ることもできるので環境エンリッチメントのひとつになりました。クリムネインコもハシブトインコも木の素材を与えるとすぐに齧って壊してしまうので苦労していました。木を齧ってカルシウムや普段の食事を補完する栄養分を探していたのです。実際、野生のクリムネインコやハシブトインコは松の樹皮を食べます。そのため木の代わりになるようなものを与えることが必要でした。
軽石を与えたときに、クリムネインコやハシブトインコが喜んで齧っている姿が印象的でした。軽石は全ての鳥種に使えますが、特にイワインコやハシナガインコ、キビタイヒスイインコ、アオハシインコ、ズグロサメクサインコにお勧めです。楽しそうに使う姿を見ることができます。嘴で突くだけでなく、止まり木としても使います。野生でなくケージの中にいる鳥にとっては、軽石を嚙ることでグリッドの補給にもなります。
この時期に2回目、3回目の産卵で生まれた雛を抱えている鳥もいます。そのような親鳥が十分に栄養を摂れるようになると、雛も早く巣立ちすることができます。雛が早く独り立ちすることで、親鳥も秋の繁殖休止期に入り、次の繁殖期に備えることができるのです。
ロロパーク繁殖センターの最近の繁殖例
- ニセズグロオビロインコ 2羽
- シモフリインコ 2羽
- ムラサキガシラジャコウインコ 2羽
- アカハラウロコインコ 2羽
- コミドリコンゴウインコ 1羽
©2020 Rafael Zamora Padrón – Loro Parque Fundación
翻訳:WING YOU事務局
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