親鳥による雛の子育て

Rafael Zamora Padrón, Scientific Director, Loro Parque
ラファエル・ザモラ・パドロン
ロロパーク財団 サイエンティフィック・ダイレクター


毎年、鳥たちを飼育下で繁殖させる際、飼育者は必ず一つの重要な決断に直面します。
「各ペアが、抱卵やヒナの育雛に追加のサポートを必要としているかどうか」 という判断です。

この状況は、一年の中でも長い期間にわたって続きます。
人工育雛であれ、親鳥育ちであれ、ヒナが自立するまでの期間が長いためです。


野生下の鳥は、つがいになった最初の年からうまく繁殖できるわけではありません。
多くの失敗があり、十分な経験・成熟・スキルを得るまで、多くの繁殖がうまくいかずに失敗に終わります。

そのため、ボウシインコ、コンゴウインコなどのオウム類の多くの種では、繁殖用ペアとして確立されるまでに数年かかることも珍しくありません。
これは飼養下でも同じですが、最初の産卵を成功できるかどうかは、管理者の判断とスキルに大きく依存します。


雛鳥を育てる理想的な方法は、親鳥による育雛 です。
その方が成長が早く、その種に特有の自然な行動が身に付きやすいからです。

一方で、人工育雛の中にも多くの管理方法があります。

  • 孵化日を揃えるための卵の差し替え
  • 卵数が多すぎる場合の一部卵の除去
  • 兄弟間で成長差が大きい場合に代理親を利用する
  • 弱いヒナに手助けするため、巣箱内での部分的な人工育雛
  • 親鳥がつついたり傷つける可能性がある場合のヒナの救出
  • 抱卵・育雛中にオスが問題行動をする場合の隔離
    など、非常に多くの判断とタイミングが必要になります。

これらすべての努力は、ペアの繁殖結果を最適化するためのものです。
繁殖は、個体差だけでなく、種ごとの特性にも大きく左右されます。


「親鳥育ちは良い」「人工育雛が良い」と単純に言い切るべきではありません。
どの方法を用いるか、あるいは両方を組み合わせるかは、状況と管理者の知識によって変わります。

ただし事実として、
親鳥が全過程を問題なくこなせた場合、その子どもは肉体的にも精神的にも非常に健康に育つ傾向があります。
そのため、繁殖施設はできるだけ多くのペアが自然に繁殖過程を完了できるように努めるべきです。


繁殖施設内の全ペアを完璧に同期させ、完全な親育ちを実現することはほぼ不可能です。
だからこそ、トレーニングと経験によって得た知識が不可欠です。
あらゆる選択肢を理解し、適切に活用することで、鳥の繁殖の世界を存分に楽しむことができます。


成功する育雛の鍵の一つは、
ヒナをできるだけ親鳥の視界内に置くこと です。
これにより、ヒナは将来に必要な基本行動を親から学ぶことができます。

代理親や人工育雛を用いた場合でも、
同種または他種の若鳥、そして成鳥との交流を、生後最初の数か月に十分に持たせることが非常に重要 です。
これは将来の繁殖行動の問題を防ぎ、より自然な行動を身につけるための鍵となります。


最後に、
「親育ちが良い」「人工育雛が良い」という単純な話ではありません。
成長段階、環境、そして提供されたケアによって結果は大きく変わります。

どちらが“絶対に良い”というものではなく、
ヒナにとって最良の選択を、状況に応じて行うことが重要なのです。

©2025 Rafael Zamora Padrón, M.Pérez – Loro Parque Fundación
翻訳:WING YOU事務局

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