コース8 鳥のお喋りを科学する
1時間目 インコやオウムはなぜ喋れるのか?
なぜ、コンパニオンバードは地鳴きやさえずり、口笛などの生まれ持ったレパートリーだけでなく、人間の言葉や機械音の真似ができるのでしょうか。近年、デューク大学を始めとする世界的な科学者チームの研究により、音声を真似することが得意な鳥種がいることが判明しました。
これまでも音声学習メカニズムを解明するため、セキセイインコの脳に対する研究が長年行われてきましたが、研究では、セキセイインコのほか、オカメインコ、コニュア、ラブバード、ボウシインコ2種、ヨウム、アオキコンゴウインコ、そしてケアの8種類に対象範囲を広げました。インコ・オウム類に加え、ヒトやスズメ目(ソングバード)の脳で言葉や歌に関連する遺伝子マーカーを特定する研究を行った結果、インコ・オウム類の脳が、ソングバードやハチドリとは異なる構造であることが判明しました。インコ・オウム類の脳では、音声学習を行う「コア」領域を囲むシェルと呼ばれる領域も、音声学習に関わる役割を担っていることが分ったのです。
この論文はPLOS ONEという科学ジャーナルで発表されており、「インコ・オウム類の脳は、音声学習システムが二重化されているようなユニークな構造である。ソングバードやハチドリにも音声学習をつかさどるコア領域があるが、インコ・オウム類の場合は、そのコア領域の周りにあるシェル領域も、音声学習をつかさどる役割を果たしている。これが他の鳥種と異なる点である」と書かれています。さらに、お喋りが得意なインコ・オウム類のシェル領域は、他の鳥種よりもサイズが大きいことが明らかになりました。
最も古い鳥種であると考えられているニュージーランドのケアも今回の研究対象となりましたが、ケアのシェル領域は原始的な構造をしていることが分りました。つまり、2,900万年前からこのようなシェル領域の神経組織が存在していたと考えられます。
「今回の発見は、インコ・オウム類の研究に大きな発展をもたらすものです。音声を真似るために必要な情報を彼らの脳がどのように処理しているのか、そしてヒトの言葉の音声を真似するメカニズムとは何かを知る大きな一歩となりました」(Mukta Chakraborty, デューク大学神経生物学Erich Jarvis准教授研究室ポスドク研究員)
Plos Oneで発表された論文(英語)はこちら
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0118496
(2015/9/23 Laura Doering 寄稿記事)
翻訳:小林由香
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