飼い鳥の問題行動の落とし穴 その1

コース5 鳥の問題行動を考える

1時間目その1 - 飼い鳥の問題行動の落とし穴

飼い慣らされない飼い鳥

私のような暇が苦手なタイプの人にとって、鳥は素晴らしい生き物です。30年以上に渡り、鳥に携わり、共に暮らしてきた私でさえも、いまだにその奥の深さに刺激を受けますし、鳥の行動研究はとても楽しく、学びの連続です。同時に、その奥深さに気が遠くなり、研究すればするほどもどかしく、自分の知識不足に苛立ちを感じる、まさに矛盾した状態でもあります。

国内で繁殖され、人の手で育てられた雛がペットショップで販売され始めたのは1980年代の終わりです。つまりその歴史はまだ浅く、正しく鳥を育てるために学ぶべきことがまだまだあります。飼い鳥の行動学を研究する立場から言うと、鳥に関する情報の殆どは経験則に基づくもので、裏付けや科学的根拠のないものです。長く研究している我々でさえも、情報が圧倒的に不足しています。

鳥の行動に関する本の矛盾

鳥種によってはもちろんのこと、同じ鳥種でも一羽一羽に個性があります。鳥によって性格や人との接し方が全く違うため、本によって、鳥の行動に関する内容が矛盾してしまうことがあります。そのため、初めて鳥を飼う人にとっては、この相違が大きなストレスなりかねません。飼い主は本の内容をしっかり理解し、自分の常識と照らし合わせる必要があります。アメリカで出版されているCompanion Parrot Magazineの発行者であり、また多くの雑誌に鳥の行動学について寄稿しているサリー・ブランチャード氏は以前、「鳥の行動に対するアドバイスは、鳥と飼い主の信頼関係にどう影響を与えるのかという観点から評価されるべき。信頼関係が悪化するようなことになってはならない」と語っていました。

私はプライペートと仕事で30年以上鳥に関わって来ましたが、鳥の行動学は学べば学ぶほど新しいことが出てきますし、知らないことだらけです。ですので「簡単な」こととして質問され、それに回答することに違和感を感じます。たとえば、10年前に、どうやったら噛むことを止めさせることができますかという質問受けていたら、その場ですぐに何かアドバイスしていたと思います。でも今は、噛むという問題行動の裏にもっと重要な問題、鳥と飼い主の関係性があると考え、なぜその鳥が噛むようになったのかに注目します。そして背景や環境の情報をもらってからアドバイスするようにしています。

飼い主側の問題

鳥の行動コンサルタントとしての長年の経験から言えることは、飼い鳥の問題行動の原因の多くは飼い主にあるということです。問題は様々な形で現れますが、よく見受けられるのは、過剰な期待を鳥に寄せる、鳥の行動をうまくコントロールできない、また鳥に関する知識や理解が不足していることが挙げられます。

過剰な期待

イメージ写真 Photo by Nikola Johnny Mirkovic on Unsplash

残念なことですが、鳥がどういう生き物であるか何の情報もないままお迎えしてしまうことはよくあります。

どんな動物も、犬と同じように飼い主が絶対、と考えてくれると思う人が少なくありませんが、でもこれは犬との間だけに成り立つ関係です。猫や鳥は人を絶対的な存在とは思いませんし、自分たちが飼われているとも思っていません。人間が繁殖しても、鳥を飼い慣らすことはできません。飼い鳥であっても遺伝子は野生の鳥と同じであり、人が鳥にペットとして期待していることなど知ったことではないのです。いざ飼い始めてからこれに気づき、ショックを受ける人がたくさんいます。

鳥が犬のように懐いたり、ときには人間のような行動をすると感じる人もいます。これがまさに問題の原因のひとつです。そのような行動が見られたとしても、鳥は羽が生えた人間や犬でもなければ、子供の代わりでもありません。鳥とは、散らかすのと破壊することが得意で、とても手がかかり、騒がしく、そして非常に社会性のある知能の高い生き物です。誰にとっても良いコンパニオンアニマルになるものではないのです。

その2につづく

(2013.7.30 Liz Wilson 執筆記事)
翻訳:小林由香

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CoverPhoto by Steve Douglas on Unsplash

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