アテローム性動脈硬化症 ― Part 1

アテローム性動脈硬化は、コンパニオンバードが発症しやすい病気のひとつです。成鳥が突然死してしまった場合、進行性の疾患であるアテローム性動脈硬化を発症していた可能性があります。

アテローム性動脈硬化症とは

アテローム性動脈硬化症の英語表記 ”atherosclerosis” は、ギリシャ語の”athero(粥状の)”と”sclerosis(硬化)”という単語を組み合わせた言葉です。文字どおり、動脈の内膜にドロドロとした粥状のコレステロールが蓄積し、やがて硬いプラークを形成します。この溜まったプラークが剥がれ落ちると血栓の原因となり、心筋梗塞を引き起こします。主に動脈内膜の炎症が発端となります。炎症が酷くなるほど、アテローム性動脈硬化症の発症リスクが高まります。

ヒトを除く動物の中で、アテローム性動脈硬化を発症しやすいのが鳥類です。その発症率は1.9~91.9%と非常に幅広い数値で報告されています。(Powers,2015)

鳥類に対する情報

ヒトに対するアテローム性動脈硬化症の情報は豊富にありますが、そのまま鳥類に当てはめることはできません。

ウズラやニワトリ、水鳥に関する研究はありますが、オウム類(オウム・インコ)に関してはほとんど行われていません。アテローム性動脈硬化症が原因で死亡したオウム類の診断は主に動物園の鳥に対してであるため、飼育環境や食事内容がバラバラです。

さらに鳥類に関しての研究は、ヒトを含む哺乳類における危険因子を基に行われているため、遺伝子を含め鳥類特有の問題をカバーできていない可能性があります。

これから書く内容は現時点での研究に基づくもので、今後5年のうちに書き直す必要がでてくるかもしれません。それでもこの病気の危険性を考えると、現在分かっていることをお伝えする意味があると思っています。新しい発見や研究により、以下の内容が覆る可能性があることをご承知おきください。

感受性が高い鳥種

鳥類に対するアテローム性動脈硬化症の危険因子はまだ把握されていませんが、少しずつ分かってきたことがあります。

まず、ボウシインコ、ヨウム、オキナインコ、そしてオカメインコがこの病気に罹りやすい鳥種であることが分かっています。大型オウムやコンゴウインコにも発症例がありますが、それほど多くはありません。ただし、飼育下においては鳥種に関係なく発症例が認められています。

年齢

危険因子のひとつが年齢です。高齢の鳥ほど発症しやすくなりますが、一方で症例は1~42歳と幅広い年齢で見られます(Nemeth at al. 2016)。コンパニオンバードの場合、10歳を超えると症例が多くなります。

性別

現在までの報告によると、メスのリスクが高いことが分かっています。発情期になるとカルシウムに加え、体内にコレステロールやトリアシルグリシロール、リポタンパク質が急激に増えるため、リスクが高まります。

食事と栄養

「本来、動物性たんぱく質を摂取しない鳥種に、コレステロールがほんの0.25%でも含まれる餌を与えると、血漿および血清コレステロールが激増する。(Petzinger and Bauer, 2013)」という報告があります。

また同じ研究者が2003年に発表した論文によると、パーム核油(飽和脂肪酸)を含む高脂肪な餌を与えられていたヨウムのコレステロール値が上がったという記述があります。

さらに2012年には47羽のオカメインコに対する研究において、魚油を含む餌を食べているグループの血清コレステロール値はアマニ油が含まれた餌を食べているグループよりも低いという研究結果がでています。「魚油(乾燥藻類など)はαリノレン酸以上にアテローム性動脈硬化症の危険因子を減らし、予防できる可能性がある(Petzinger and Bauer, 2013)」とされています。

そのほか、鳥類においてはペクチン(果物や野菜に含まれる水溶性繊維)を摂取することで、コレステロール値が下がるとされています。

哺乳類では、食べすぎや肥満もこの病気の危険因子であることが分かっています。鳥類については様々な意見があり、まだ結論が出ていないようです。

引き続き、その他の危険因子、そして予防のために飼い主ができることについてはプレミアム記事をご覧ください。

Pamela Clark, 2019.6.19著
翻訳:小林由香

References

Nemeth, N.M. , Gonzaliz-Astudillo, V., Oesterle, P.T. Howerth. E. W.  “A 5-Year Retrospective Review of Avian Diseases Diagnosed at the Department of Pathology, University of Georgia”. Journal of Comparative Pathology. Volume 155, Issues 2–3, August–October 2016, Pages 105-120. https://doi.org/10.1016/j.jcpa.2016.05.006

Petzinger, C. PhD, Bauer, J, DVM, PhD, Dip. ACVN. 2013. Journal of Exotic Pet Medicine. Volume 22, Issue 4, October 2013, Pages 358-365. “Dietary Considerations for Atherosclerosis in Common Companion Avian Species. https://doi.org/10.1053/j.jepm.2013.10.013

Powers, L. DVM, DABVP. 2015. “The Silent Killer: Atherosclerosis in Pet Birds.” CVC in Washington, D.C. Proceedings.  Published on DVM 360. http://veterinarycalendar.dvm360.com/silent-killer-atherosclerosis-pet-birds-proceedings.

Cover Photo by Brian Asare on Unsplash

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