DJ奮闘記「(19)窮鼠猫を嚙む」

いつもありがとうございます。鳥爺です。

カワダさんは私の質問には答えず

「見せたいものがある」

と言って、セカンドバックの中から何かを探し始めました。

そういえば先週屋上で、見せたいものがある、と言ったことを思い出しました。

そして、カバンから2つの細長い冊子のようなもを取り出し、私の目の前に突き付けてきました。

「何ですか? それは?」

「見たまんまだよ」とカワダさん。

カワダさんが私に見せてくれたのは、小切手帳と手形帳でした。

しかも1枚という単位ではありません。それぞれ一冊ずつです。

嫌な予感がしました。

2冊ともほとんど未使用品です。

金額も日付も書いてありません。

ただ、代表者印は全ページに押印されています。

「俺がここに好きな金額を書いたらどうする?」

と、カワダさんが小切手と手形を指差しました。

すでに銀行取引停止処分を受けていたので、小切手や手形が有効なのかどうかわかりません。

「何とか言えよ」

私が何も答えられなくて黙っていたので、痺れを切らしたようです。

ここは喫茶店です。

ここでまさか大声で怒鳴ったり、暴力を振るったりはしないと思います。

「あれ」を言うなら今しかない。しかし「あれ」を言ったらどうなるかわかりません。でも、「あれ」を言うしかありません。

「一体いくら借りているんですか? その根拠がなければ警察に相談しますよ」と。

言ってしまいました。心臓バクバクです(汗)。(「あれ」とは警察のことです)

さて、どんな反応をされるのかと思いましたら、小さなドスの効いた声で、

「そんなことは想定済みだ」

とビクリともしませんでした(汗)。

それよりも

「おまえの家族のこと、会社のこと、全部調べているぞ」

と言われました。

そして私の家族や会社のことを詳しく話してくれました。すごいですね。よく調べている。感心している場合ではありませんが、、、(苦笑)。

でもこれはあきらかに脅しです。録音機を持っていれば、と後悔しました。そうなったらしかたがありません。私も言ったついでです。かなり自棄っぱちになっていました。

「窮鼠猫を嚙む、って知っていますか? もし、家族や会社に手を出したら、自分も何するかわからないですよ」

本気でカワダさんと刺し違える気持ちでした。

後先のことを考えずに、勢いでよくこんなこと言えた、と自分でも思いました。

カワダさんは私を睨みつけていますが、私は睨み返せないので、カワダさんの手ばかりを見ていました。カワダさんの手は「グー」になっていました。

しばらく沈黙が続きました。

ほんの数分かもしれませんが、私には1時間以上の膠着状態だったような気がしました。

またまたカワダさんのほうが痺れを切らし、

「借用書を見せてやるよ」

とカバンの中から1枚の紙を取り出して見せてくれました。

 この紙が借用書がでした。こんな紙切れ一枚で、これからの人生が大きく変わるとは、、、!?

(つづく)

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コメント

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  1. 小切手帳と手形帳?
    二つの違いがわからず・・その重要性が分かっておりませんが(汗)未使用で押印されているっていうことは相当ヤバいですよね?

    恐怖に震えながら珈琲をぶっかけてみるとか・・・
    乾かせば使えるんですか?
    (その前に命が危ないですね)

    この状況で

    「窮鼠猫を嚙む・・」

    って言える鳥爺が凄い。

    家族を持ち出されると、ドラマの様に強くなれるんですね。

    借用書・・・・見たくありません。

  2. 小切手は金融機関で現金のように使えるもので、手形は約束の期日がくると現金化できるものです。約束より早く現金化したいときは「割引」といって、金融機関に手数料(利息?)を支払えば大丈夫です。
    なので、この2つの手帳に任意の金額を書くことができます。
    悪用されたらたいへんなことなりますが、これが「人質」になっていたのです。
    続きは次の土曜日です。よろしくお願いします。

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